小間使こまづかい)” の例文
もっとも有福者は花嫁の家から一生使うべき小間使こまづかいを添えて来るのが大抵通常である。これで全く結婚の事が終ったというのじゃない。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
ベッキイはすっかり小間使こまづかいになりすまして、いそいそ若い御主人に従い、膝掛や手提を持って、馬車のところまで見送りに出て来たのでした。
牧は寛政二年うまれで、はじめ五百の祖母が小間使こまづかいに雇った女である。それが享和三年に十四歳で五百の父忠兵衛の妾になった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
或るお屋敷で、主人公が小間使こまづかいをさがしているのです。もっとも、前にいた小間使の娘さんは、僕が買収して、親の病気だと申立ててめさせたんです。
什器破壊業事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
小女は浅草清島町という所の細民さいみんの娘なり。形は小さなれど年は十五にて怜悧れいりなり。かの事ありしのち、この家へ小間使こまづかいというものに来りしとなり。
良夜 (新字新仮名) / 饗庭篁村(著)
小間使こまづかいとは枕頭につき切りですし、角田つのだという総支配人の老人や、親族達はひっ切りなしに様子を見にやって来ます。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
明けて入るのを、小間使こまづかいが、あれといって、手を突く間もなく、一人が背後うしろからぴッたり閉めた。雨戸は半開はんびらきのまま、朝がけのいくさ狼狽うろたえたような形。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
入口の処に小間使こまづかい風のわかい女が用ありそうに立っていた。山西はまた怪しい小女こむすめではないかと思って好く見たが、それは十八九に見える円顔まるがおの女であった。
水魔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
これと共に美育社は青年小説叢書と題してまづ生田葵山の小説『自由結婚』次に余の拙著『野心』西村渚山の『小間使こまづかい』黒田湖山の『大学攻撃』等を出版し
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
酔って云うのではないが表向おもてむき、ま手前は小間使こまづかいの奉公に来た時から、器量と云い、物の云いよう裾捌すそさばき、他々ほか/\の奉公人と違い、自然に備わるひんというものは別だ、実に物堅い屋敷にいながら
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
床の間の花をむしったり罪もない梅(専ら光子にかしずいている小間使こまづかいの名)
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
良人おっと沼南と同伴でない時はイツデモ小間使こまづかいをおともにつれていたが、その頃流行した前髪まえがみを切って前額ひたいらした束髪そくはつで、嬌態しなを作って桃色の小さいハンケチをり揮り香水のにおいを四辺あたりくんじていた。
三十年前の島田沼南 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
かくて漁師の娘とはなりぬれど、弱き身には舟のかじ取ることもかなはず、レオニのあたりに、富める英吉利人イギリスびとの住めるにやとはれて、小間使こまづかいになりぬ。
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
と、小間使こまづかいを呼んだが、返事がないので、じれて来て、窓へきあがろうとしたが、あがれない
雨夜草紙 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
やがて、友達の様に懐しんでいた美子姫の惨死に、悲歎の余り目を泣きはらした、小間使こまづかいの小雪が這入って来た。美しい顔が涙に洗われて、異様な魅力をたたえている。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
前のは御自分ものであろうが、扱帯しごきの先生は、酒の上で、小間使こまづかいのを分捕ぶんどりの次第らしい。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
女小姓は茶、烟草タバコ手水ちょうずなどの用を弁ずるもので、今いう小間使こまづかいである。中臈は奥方附であると、奥方の身辺に奉仕して、種々の用事を弁ずるものである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
お弟子兼小間使こまづかいの少女が、不審を起して、寝室へ入って見ると、ベッドはもぬけのからであった。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
召使、小間使こまづかい二人、しも女中二人、書生、自動車運転手、助手
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)