小蛇こへび)” の例文
和尚はそれを捉えて弟子が捧げている鉄鉢てつばちに入れたあとで、又念じていると屏風のうしろから一尺ばかりの小蛇こへびが這いだして来た。
蛇性の婬 :雷峰怪蹟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
といいながらうりをりますと、中にはあんじょう小蛇こへびが一ぴきはいっていました。ると忠明ただあきらのうったはりが、ちゃんと両方りょうほうの目にささっていました。
八幡太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
俵藤太たわらとうだが持ってきた竜宮の宝物に、取れども尽きぬ米の俵があって、のちに子孫の者がその俵の尻を叩くと白い小蛇こへびが飛びだして米が尽きたと称するのも
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
その指には、白金プラチナ小蛇こへびの目に、小さな黒金剛石くろダイヤ象嵌ぞうがんしたのが、影の白魚のごとくまつわっていたのである。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
小蛇こへび地蟲じむし、はさみ蟲、冬の住家すみかに眠って居たさまざまな蟲けらは、朽ちた井戸側のあいだから、ぞろぞろ、ぬるぬる、うごめきいだし、木枯こがらしの寒い風にのたうちまわって
(新字新仮名) / 永井荷風(著)
なほ三八九念じ給へば、屏風のうしろより、三九〇たけばかりの小蛇こへびはひ出づるを、三九一是をもりて鉢にれ給ひ、かの袈裟をもてよくふうじ給ひ、そがままに輿に乗らせ給へば
大蜥蜴は明治何年か以来、永久に小蛇こへびくわえている。永久に——しかし彼は永久にではない。腕時計の二時半になったが最後、さっさと博物館を出るつもりである。桜はまださいていない。
早春 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そのあかんぼはまれたときから、ふしぎな子で、きれいなにしき小蛇こへびくびのまわりに二巻ふたまきついていました。そしてそのあたまとしっぽのさきながびて、あかんぼの背中せなかでつながっていました。
雷のさずけもの (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
それが取れども尽くることなき宝の米俵であったのに、或る時底をはたいて白い小蛇こへびが飛び出し、それ以来空俵あきだわらとなったというなどはなお大ウソであるが、この話よりも古くできた信貴山しぎさん縁起えんぎ
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
肥った女の口笛がむと、その草が一めんに動きだしてその中から小蛇こへび数多たくさん見えだした。それは青い色のもあれば黒い色のもあった。その蛇がにょろにょろといだして来て女の前へ集まって来た。
蟇の血 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)