小童こわっぱ)” の例文
寄場はおろか、橋の下、お堂の下をはいくぐっても、その小童こわっぱをさがしだし、あいつに鼻をあかしてやらなけりゃアおさまらねえのだ
顎十郎捕物帳:10 野伏大名 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「討て、小童こわっぱ、探し出して討て! が俺は逃げて逃げて、決して汝には討たれてやらぬ。……こう決心して逃げ廻る心、快いぞ快いぞ」
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
小童こわっぱめ、おれ様の計画をぎつけたからには、もう生かしておけぬぞ。小童の癖に、おれ様の仕事の邪魔をする御礼をするぞ。うーむ)
地中魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
いわんや年もゆかぬ小童こわっぱ、見も知らぬ推参者にかかる無礼を加えられては、死んでも弱いは吹けないのが神尾としての身上しんじょうであります。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
あたかも聖書の戦馬が「ヴァー!」とうなるように、彼らは「前へ!」と叫ぶ、そしてたちまちのうちに小童こわっぱから巨人となる。
小姓共の方は、咄嗟とっさに主人の殺されたのを見、而も殺した人間が自分たちと餘り違わない小童こわっぱであることを知って、明かに度を失っていた。
だが卜斎は、そのかっこうのているところから、これこそ、奥へ逃げこんだ小童こわっぱであろうと、こぶしをかためてなぐりつけた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「何をあの小童こわっぱめが、多少、心強い奴と申しても、何程の事があろうか? 片脇にはさんで、海に入れてやろう」
身分たかき家柄とはいえ、あまりと申せば小童こわっぱめが、家柄を鼻にかけて増長しおるからじゃ。いわば小童が、みずからまねいた自業自得というべきところなのじゃ。
亡霊怪猫屋敷 (新字新仮名) / 橘外男(著)
「いや、よし、分った。近所の小童こわっぱたちじゃ。だれが教えたか、つまらぬ唄を唄って、悪たれどもがわいわい向うへ逃げて行くわ。仕方のない奴等じゃ。——さあ馬じゃ」
山県有朋の靴 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
坐睡いねむりをせぬまでも、十三歳やそこらの小童こわっぱだから、眼の皮をたるませて退屈しきって居るべき筈だのに、耳を傾け魂を入れて聞いて居た様子は、少くとも信長や自分の談論が解って
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
桃太郎風情の小童こわっぱ十人二十人、しらみひねるよりなお易きに
鬼桃太郎 (新字新仮名) / 尾崎紅葉(著)
小童こわっぱ——小童がっ」
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
「あれ、あの丘のすそに、うずくまっている小童こわっぱがあろう。——怪しげなことをしておるぞ。何をしてるのか、すぐ見てこい」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
袴広太郎とかいう小童こわっぱに、かすめ取られたお前ではないか、もしその筋へ突き出されてみろ。島原の残党キリシタンとして、否応いやおうなしに火あぶりだ。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
玉屋の前は真黒に人がたかって、そうして口々に、さいぜんの小童こわっぱの強かったことの評判です。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
これがお前にびて、もっともっと踊れ! と言ってるわけなのだ! 御苦労! 御苦労! これでやっと第一期の研究も終わりだ! アランの小童こわっぱなぞが何と言おうと
令嬢エミーラの日記 (新字新仮名) / 橘外男(著)
草むらの中へ、首を突っこみながら、彼女はおめいた。頭を土にぶつけても、彼女の頭のなかにある、小童こわっぱの城太郎という観念は脱けなかった。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たかの知れた小童こわっぱ、それにしてはイケ図々しい奴と、らしめのためにポカポカやっていたのだが、急に反抗すると、それは驚くべき腕ざわりで、油断をしていたとはいえ
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「口の減らない小童こわっぱめが、この白山のありとあらゆる所、皆この俺の領分じゃわい!」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
小童こわっぱの時代を抜けて、身なりこそ大きくなったけれど、体の大きくなったという事実だけで、大人になったとは誰にでも許せるものではない。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分がおくれを取ったのは、つまり自分が力負けをしたものに過ぎない、不意を襲われたために、この小童こわっぱにしてやられたのだ、用心してかかりさえすれば、なんの一捻ひとひねりという気が先に立つのだから
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「角太郎と云う小童こわっぱで」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
見ると空の黒鷲くろわし、そのつばさにひそんでいるのは、呂宋兵衛がうらみ骨髄こつずいにてっしている鞍馬くらま小童こわっぱ丹羽昌仙にわしょうせんはきッと見て
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこに串刺くしざしとなった死骸よりも先にその方をジッとすかして見ると、がらの小さな、もんぺを穿いたひとりの小童こわっぱがいきなり山刀を抜きそうにしてくるので
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
髪は麻糸でそッけなくうしろへ結び、なりは手織りの筒袖つつそでに、黒のもんぺときまッていて、腰の短い山刀が、この小童こわっぱの風采を、すこし異様に光らせています。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まだ竹刀しないをかついで、よく道場通いの途中で見かけた前髪の小童こわっぱであったが、今仰ぐと、二十歳はたちか、一か、末娘のお信の方に似てやや丸顔な、くちの大きな、そして
無宿人国記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二人は、ずっと以前の、小娘と小童こわっぱ頃を思い出しながら、闇から闇へ、息のきれるまで駈けた。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ウム、なかなか不敵な小童こわっぱだ、てめえはお蝶の道づれだろう、それとも、何かべつな用があってここへ来たのか。それを言わねえとたたッ斬るぞ、さ、言うか、言わぬか」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「えらい者が手に入った。その小童こわっぱは、どうやら武田家たけだけ御曹子おんぞうしらしい。五十や百の金で、人買いの手にわたす代物しろものじゃねえから、めったな手荒をせず、島へあげて、かいほうしろ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
物売りの世間摺せけんずれ——旅ずれした小童こわっぱの、らずぐち——と、小六も初めは見たのであったが、心が解けてうなずくと、少しもわるびれた様子はなく、舟を去って、日吉はすごすご立ち去ろうとした。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
小童こわっぱの罪は、主人の罪、どうなりと、ご処罰をうけたまわろう。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「帰さぬぞよ、小童こわっぱ」と、関平を挟撃した。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
小童こわっぱめが!」
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)