寝言ねごと)” の例文
旧字:寢言
が、寝言ねごとにまでもこの一大事の場合を歌っていたのだから、失敗やりそこなうまでもこの有史以来の大動揺の舞台に立たして見たかった。
二葉亭追録 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
ふた声、寝言ねごとで人を斬るような気合をかけたので、若者部屋の者が、がばっと、総立ちに起き上がって、夜半よなかに、大笑いをしたこともあった。
べんがら炬燵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「道理で君はよく寝言ねごとを云っているよ。骨が飛ぶからカンニンしてッ、そう云ってゆめにまで君は泣いているンだよ」
清貧の書 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
日華事変にっかじへんがおこり、日独伊防共協定にちどくいぼうきょうきょうていがむすばれ、国民精神総動員という名でおこなわれた運動は、寝言ねごとにも国の政治に口を出してはならぬことを感じさせた。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
例の不正な鉱脈の秘密が知られるかと気がかりの主人公は、ついに寝言ねごとのうちに、いくたびかその鉱山の位置を喋っていたのであった。ここに事件は解決した。
什器破壊業事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
敬太郎はとうとうこの禅坊主の寝言ねごとに似たものを、手拭てぬぐいくるんだ懐炉かいろのごとく懐中させられて表へ出た。おまけに出がけに七色唐辛子なないろとうがらしを二袋買ってたもとへ入れた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
与八が訪ねて行った時、道庵先生は八畳の間に酔い倒れて、寝言ねごと半分に与八に返事をしています。
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
あすはどの手で投げてやろうと寝返り打って寝言ねごとを言い、その熱心が摩利支天まりしてんにも通じたか、なかなかの角力上手になって、もはや師匠の鰐口も、もてあまし気味になり
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
ただ奥座敷に寝ているらしい伝六郎の寝言ねごととも歌とも附かぬグウダラなけ声が聞えている……その声を聞き聞き彼は真暗な中廊下を抜けて、玄関脇の薬局の扉を開いた。
笑う唖女 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「だめですよ。床の中にいて戸も明けてくれずに、寝言ねごとみたいな事をいってるんですもの」
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
船頭「左様さうでもごぜへますめへ。秀八と寝言ねごとの手がありやアしませんかね。」
町中の月 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
おもうこと寝言ねごと」なうことわざこそ事実にかなうなれ。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「これア寝言ねごとだぜ」ことわっている。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
半蔵の寝言ねごとだ。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
筆にするもまことにおはもじとは思いひるまれ候えども、逢うべきおもてはなおさらなく。チェッ、何を寝言ねごとをいってやがるんで、おはもじづらが聞いてあきれら
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なにを寝言ねごとみたいなことを言ってんのよ。早くおきかせなさいな、けさがた、あんたの見たということを……もしかしたら、オーさんは、けさがた此処ここの家へ……」
電気看板の神経 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「この間来た時禅宗坊主の寝言ねごと見たような事を何か云ってったろう」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いつかおどろかせた録音の集音器しゅうおんきが入っているんだ。昨夜一晩さくやひとばん、あの集音器はこの居間にいて、主人公の寝言ねごとを喰べていたんだ。僕はその寝言の録音に期待をもっているんだよ
什器破壊業事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「ハイじゃあない、なにをこの夜中にブツブツ寝言ねごとをいっている。なぜ早く寝ないか」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「何を云うんだな禅坊主の寝言ねごと見たいな事を。じゃ誰だい」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
うに専念せんねん、ことばはブツブツみつぶれた寝言ねごとのようだ。このぶんなら、まだ十や十五はえそうだという顔でいると、どうしたのか竹童ちくどう、時々、チクリ、チクリと、変に顔をしかめだした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこに居るなら、隆夫は寝言ねごとを日本語でいってもよかった。
霊魂第十号の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
突然、ふた声ばかり、寝言ねごとで人を斬るような気合を発したので、若者部屋の者が皆、がばと、総立ちに刎ね起きて、後で、老人が寝呆ねぼけた事と分ってから、夜半よなかに大笑いしたことなどもあった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、寝言ねごとではないひとり言をいった。
『伝右どの、又、面白い話が出ましたぞ。こんどのは、惚気でなくて、艶聞えんぶんです。——この中で一番若うて、ずい一の美男の磯貝十郎左が、ゆうべ源五右衛門殿に、寝言ねごとを聞かれたそうでござる』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なにを寝言ねごとをいってやがるんでッ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)