“嬶(かゝあ)” の例文
御旅館醉月は嬶(かゝあ)天下だつた。亭主はおかみさんよりも年下で、或る工業會社の事務員を勤め、宿屋の事には一切口出しをしなかつた。
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
その嬶(かゝあ)といふのが、また髪をかう、お河童さんにしやがつて、風呂敷のやうな洋服を着てゐるんですから、なんとも、はや、お話にならん。
百三十二番地の貸家 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
イヤ又た一つ出来た、今度は男の心意気よ『工場の夜業で嬶(かゝあ)が遅い、餓鬼(がき)はむづかる、飯(めし)や冷える』ハヽヽヽ是れぢや矢ツ張り遣(や)り切れねい
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
「わしもさ、晝間(ひるま)はそれでも見物人(けんぶつにん)にまぎれてわすれてゐるが、夜(よる)はしみじみと考(かんが)えるよ。嬶(かゝあ)や子(こ)ども等(ら)のことを……どうしてゐるかと思(おも)つてね」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
長「ムヽ…じゃア此の人は奪られねえのかえ、冗談じゃアねえぜ、え、おう、己(おら)アお前(めえ)のお蔭で夜(よっ)ぴて嬶(かゝあ)に責められた……旦那ア間違(まちげえ)だって程があらア」
文七元結 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
『しかし、何うもしやうがねえでな? おらには嬶(かゝあ)があるしな、向うだつて、ちやんとした亭主があるで——』
船路 (新字旧仮名) / 田山花袋、田山録弥(著)
しかもお生家(さと)が並々ならぬ大身なる処より、嬶(かゝあ)天下の我儘一杯にて、継子苛(いぢ)めの噂もつぱらなる家なり。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
金さへ呉れたら自分の嬶(かゝあ)を解剖する世話でもするだらう。だが學術界に取ツては、彼樣な人物も必要さ。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
よろこんだの、よろこばないのつて、のんべえ は轉(ころげ)るやうに、よろこんでその山(やま)から家(いへ)に驅(か)け戻(もど)りました。來(き)てみると嬶(かゝあ)も子(こ)どもも誰(だれ)もゐません。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
時に例の剽軽男(へうきんをとこ)、ニユーと首を延して声を低めつ「嬶(かゝあ)も矢ツ張り共産主義ツた様な一件ヂヤ無(ね)いかナ」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
実は此処(こゝ)に百両持ってるが、これはお前(めえ)のを奪(と)ったんじゃアねえぜ、己は斯(こ)んな嬶(かゝあ)の着物を着て歩く位(くれえ)の貧乏世帯(じょてえ)の者が百両なんてえ大金(てえきん)を持ってる気遣(きづけえ)はねえけれど
文七元結 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
友吉 ぢや、一つ、嬶(かゝあ)に相談して見ます。
動員挿話(二幕) (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
大概の男は嬶(かゝあ)の頭を撲(なぐ)るのだ。
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
どんなによろこぶだらう、お、お、電車(でんしや)、活動寫眞(くわつどう)の樂隊(がくたい)。とうとう町(まち)へ來(き)たんだな。えツ、ほんとに嬶(かゝあ)や子(こ)ども等(ら)をつれてくるんだつたに。あれ、向(むか)ふにみへるのは何(なん)だ。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
え……本当なれば私(わたし)ア嬶(かゝあ)を追ひ出しちまひます、へえ鎧橋(よろひばし)の味噌漉提(みそこしさ)げより醜(わる)いてえひどい顔で、直(す)ぐにさらけだしちまひます、あなたと三日(か)でも宜(い)いから一緒(しよ)に成(な)り度(た)いね。
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
我儘(わがまゝ)育(そだち)で、其れに耶蘇(ヤソ)だからツて申した所が、松島さんの仰(お)つしやるには、イヤ外国の軍人と交際するには、耶蘇の嬶(かゝあ)の方が却(かへつ)て便利なので、元々梅子さんの容姿(きりやう)が望のだから
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)