かか)” の例文
「そうよ、これからだ。かかあに死なれてからというもの、お松の奴アまだからっきし子供だしよ、美味うめえ飯なんぞ喰ったこたあねえ」
旗岡巡査 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
葬式はかかアにたぬうで来た。もう死んどろ、死んどるかも知れん。わしはこの胸ん中が張り裂きゅごたる。先生、えたっちゃよかろ。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
ながら耳をそばだて聞きいると、かかよ、明朝早く起しくれ、灰色坊主のうち一疋はよほど肥えているから殺して塩すると大儲けのはずと言う。
勿論かかもいない。だが実に五十余年を過ぎて主家は没落し、始めて自由な身になった彼である。世界は新しく開けたのだ。
土城廊 (新字新仮名) / 金史良(著)
おらは商売を休むわけにもいかねえから、かかに看病させて、こうして出て来ているのだが、なんだか気がかりでならねえ。
恨みの蠑螺 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「そうだ、そうだ。長屋のかかにお情もくそもあるものか。自惚うぬぼれちゃいけねえ。」とすさんだ口調で言い、がたぴし破戸やれどをあけて三人を招き入れ
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
村人二 まだ来とらんが、さっき来るときに誘うとな、山へ行っとるけに、帰ったらすぐよこせるいうたぞ、かかが。
義民甚兵衛 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
かかに置去られ、家になくなられ、地面に逃げられ、置いてきぼりをって一人木小屋に踏み留まった久さんも、是非なく其姉と義兄の世話になるべく
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
小野のうちは父親がなく、専売局の便所掃除をしていた母親は——まるで不具もんみたい、二十七にもなって、かかァもらえんと——といってこぼしていた。
白い道 (新字新仮名) / 徳永直(著)
「やあ、九面ここつらの太平が小屋を描いてあらあ。九面の太平が小屋、あんかかあが、餓鬼をしょって立ってやがら」
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「アハハハハ。あんなヒョロッコイかかが何じゃい。俺に抱かして見ろ。一ト晩でヘシ折って見せるがナ」
いなか、の、じけん (新字新仮名) / 夢野久作(著)
この男も、今度いよいよ長いいとまを告げ、隣村山口に帰り、かかをもらってかまどを持ちたいと言う。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
知事様の奥方男爵夫人と人にいわるる栄耀えいようも物かは、いっそこのつらさにかえて墓守爺はかもりかかともなりて世を楽に過ごして見たしという考えのむらむらとわきたることもありしが
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
「どうせ、二、三十円の月給取りだろうが、そんな者のかかアになってどうするんだ?」
耽溺 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
亥の子餅くれんこ、くれん家のかかは、鬼うめ、じゃうめ、角のはえた子うめ
故郷七十年 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「太夫になると素敵ですぜ、ねえおたかさん。おいかか、どう思う」
傾城買虎之巻 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
まるで宿場女郎をぬいてきてかかア大明神にすえたよう——。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
いいかかァだろうと、時折旦那に自慢をさせるのであった。
和紙 (新字新仮名) / 東野辺薫(著)
かかに叱られて
小さな鶯 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
「これでも随分我慢をしているつもりなんで……実アさっきから、かかアや餓鬼がきがどうしたろうかと、それが心配で、足が前へ進みません」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「わっしあかかを貰った年に二人でこの桃の木を植えたんでがす。その嬶が死にやがっただ。その嬶がよ」と百姓は叫んだ。
天馬 (新字新仮名) / 金史良(著)
甲吉がかかをもらう。其は隣村の女で、奉公して居る内主人の子を生んだのだと云う。乙太郎の女が嫁に行く。其は乙の妻が東京から腹の中に入れて来たおみやげの女だ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「ウン。……第一あのかかづらが俺ア気に喰わん。鼻ッペシを天つう向けやがって……」
いなか、の、じけん (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ソレカラ山ノ宿デモ、女郎屋一同ニ、客ヲ送ル婆アモ、かかアモ、オレガ顔ヲ下カラヨクヨクシオッタ故、何モ間違イガ無カッタ、ソノ時ハ刀ハ二尺五寸ノヲ差シテイタ、山ノ宿中
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
水戸の親爺(烈公)に俺がかか
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
かかに叱られて
小さな鶯 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
「そう幾日も幾日も、病人などを置いておかれるか。毎晩、ほかの泊り客もあるのに、それを断っていては、おいらのかか餓鬼がきが干ぼしになるわい」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だのにあの悪党野郎は監獄から出ると、僕の所へ自分のかかがゆききをしていたというので、ひどいやきを入れちゃったんだ。助かりやしねえ、もう助かりやしねえんだ
光の中に (新字新仮名) / 金史良(著)
「仁三郎も途方もないかかアば持ったのう」
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
おらかかとられちゃった」
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
お酒三杯とかかかえた
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
かかに間男でもされて逃げられなすったかね。蕎麦代はその子におごっておこう。——風邪をひかせなさんなよ
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おお、もう手元が暗い、田から上がって、かかや子と、晩飯じゃ。飯がすんだら、お上人様のところへお邪魔に寄って、なんぞまた、有難いお話しを聞きたいものよの」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かかや、自分の子なら、為方しかたもないが、ほんの床几しょうぎに休んだ旅の者でな、災難でござりますわ」
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かか、ちょっくら行って来るぞ。おれが戻るまで、店の戸を開けぬがいいぞ』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「気のつかないかかあなので、あっしがいないと、何のおかまいも致しません」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
最前からこの辺へ、うさん臭い男がウロついていましたので、かかあにも油断をするなと言っていますと、案の定、向うの紙漉場かみすきばへ人数が集まって、いつのまにか八方を塞いでしまった様子です。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かか。ちょっと来てみい。……いそいで。いそいで」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「野郎、おかかにいいつけるぞよ」
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おらのかかを返せ」
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)