如露じょろ)” の例文
庭の如露じょろのやうなものはそれでつくつたのだ。真鍮は、銅の赤さも持たないし、又亜鉛の白でもなく、金の黄色い色に出来上つてゐる。
門人が驚いて先生大丈夫ですかというと、画伯は「文晁の彩色だからこのくらいのことは平気だ」としきりに如露じょろで水をかける。
明治世相百話 (新字新仮名) / 山本笑月(著)
りょう一は、いえかえると、友吉ともきちからもらった草花くさばなはちえて、如露じょろみずをやりました。きよらかなしずくがあいだつたって、したくろつちなかみていきます。
僕が大きくなるまで (新字新仮名) / 小川未明(著)
如露じょろの水が尽きる頃には白い羽根から落ちる水がたまになってころがった。文鳥は絶えず眼をぱちぱちさせていた。
文鳥 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
つばのひろい麦わらの帽子をかぶった庭男が、しきりに花の間をくぐって、如露じょろで水をやっているのが見えた。
爆薬の花籠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そして如露じょろでシャーとかけましたのでデストゥパーゴは膝から胸からずぶぬれになって立ちあがりました。
ポラーノの広場 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
と、渡りに船の譬喩たとえも恥かしい。水に縁の切れた糸瓜へちまが、物干の如露じょろへ伸上るように身を起して
開扉一妖帖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
やがてアセチリン瓦斯の匂いと青い灯が如露じょろの水にれた緑をいきいきとよみがえらしている植木屋の前まで来ると、もうそこからは夜店のはずれでしょう、底が抜けたように薄暗く
アド・バルーン (新字新仮名) / 織田作之助(著)
「ええ。ちっとばかりの地面や木なんぞもらったって、何になるもんですか。水島の物にだって目をくれてやしませんよ」お島は跣足はだしで、井戸から如露じょろに水を汲込みながら言った。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
いちごの苗を買ってやった。草花の種子や球根やをいろいろ遠い所からわざわざ取り寄せてやった。くわや、鎌や、バケツや、水桶や、如露じょろや、そう云ったものを一式揃えて持たせた。
田舎医師の子 (新字新仮名) / 相馬泰三(著)
伸子は、ある日、片手で着物の裾をつまみながら、如露じょろで部屋の前に水撒きをしていた。
伸子 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
背中せなかにはあせにぬれたシャツを着、両手に如露じょろを持って、ぬかるみの道の中を、素足すあしで歩かなければならなかった。でもぐるりのほかの人たちも、同じようにあらっぽい労働ろうどうをしていた。
そのひまに母は走りのきしが、不意を打たれて倒れし王は、起き上りて父に組付きぬ。えふとりて多力なる国王に、父はいかでか敵し得べき、組敷かれて、かたわらなりし如露じょろにてしたたか打たれぬ。
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
平次は落着きはらって如露じょろ沓脱くつぬぎの上へ置きました。
自分は急に易籠かえかごを取って来た。そうして文鳥をこの方へ移した。それから如露じょろを持って風呂場へ行って、水道の水をんで、籠の上からさあさあとかけてやった。
文鳥 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
二人は如露じょろの手をやめて、しばらくだまって顔を見合せたねえ、それからペムペルが云った。
黄いろのトマト (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
えしぼんだ草樹も、そのめぐみに依って、蘇生いきかえるのでありますが、しかしそれは、広大無辺な自然の力でなくっては出来ない事で、人間わざじゃ、なかなか焼石へ如露じょろで振懸けるぐらいに過ぎますまい。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
四つ目垣の向うは二三十坪の茶畠ちゃばたけでその間に梅の木が三四本見える。垣にうた竹の先に洗濯した白足袋しろたびが裏返しにしてあってその隣りには如露じょろさかさまにかぶせてある。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)