奇遇きぐう)” の例文
其角は此時和泉のあはといふ所にありしが、翁大坂にときゝて病ともしらずして十日に来り十二日の臨終りんじゆうあへり、奇遇きぐうといふべし。
とあっけにとられて立ちすくんでいると、そこへ奇遇きぐうにおどろきながら、小幡民部こばたみんぶ龍太郎りゅうたろうがうちつれてけつけてくる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まちをつと末男すゑをは、偶然ぐうぜんにも彼女かれとおなじ北海道ほくかいだううまれたをとこであつた。彼女かれはそれを不思議ふしぎ奇遇きぐうのやうによろこんだ。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
「いや井上円了えんりょうさんも来て居る。」「そりゃ奇遇きぐうだ。君が出際でしなに死なずに帰ってくれろといって僕は頼んだが、よう死なずに帰って来た。実にうまくいった」
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
それから朝日島あさひじま漂着へうちやくして、椰子やし果實美味うまかつたこと猛狒ゴリラ襲撃しふげき一件いつけん櫻木海軍大佐さくらぎかいぐんたいさとの奇遇きぐうてつひゞき屏風岩べうぶいわ奇異きゐ猛犬稻妻まうけんいなづまにもまれなるいぬなること
しかし彼是かれこれ十分ののち銀座四丁目ぎんざよんちやうめから電車に乗ると、すぐに又彼等も同じ電車へ姿を現したのは奇遇きぐうである。電車はこみ合つてはゐなかつたものの、空席くうせきはやつと一つしかない。
鷺と鴛鴦 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
其角は此時和泉のあはといふ所にありしが、翁大坂にときゝて病ともしらずして十日に来り十二日の臨終りんじゆうあへり、奇遇きぐうといふべし。
奇遇きぐうといおうか、皮肉ひにくなぐうぜんといおうか、じつに人間の意表外いひょうがいにでることは、わずか十つぼか二十坪の天地にも、つねに待ちぶせているものだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その時は互に名乗りもせず、それなり別れてしまいましたが、今わたしの見た弥三右衛門は、当年の船頭に違いないのです。わたしは奇遇きぐうに驚きながら、やはりこの老人の顔を見守っていました。
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
神の御ばつ夫婦ふうふえんとなりしも奇遇きぐうといふべし。こは我がをさなかりし時の事也き、筆のついでにしるして御機屋おはたや霊威れいゐある事をわかふどにしらしむ。あなかしこ。おそるべし、つゝしむべし。
実際才子佳人の奇遇きぐうにはあつらえ向きの舞台だったのに違いありません。
開化の良人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
それに反して一八郎の頭脳あたまは、怖ろしい緻密ちみつさと速度でこの奇遇きぐうの利害を考え始めた。あの二人も阿波の密境へ入り込もうとする者、また自分たちも久しく阿波の内情を探ろうとして腐心ふしんするものだ。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
編輯者 「奇遇きぐう」と云う題ですね。どんな事を書いたのですか?
奇遇 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
愛慾流転あいよくるてん奇遇きぐうつじ
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
奇遇きぐうだなあ」
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
馬糧小屋まぐさごや奇遇きぐう
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)