土質どしつ)” の例文
佐藤はその頃頭に毛のとぼしい男であった。無論老朽した禿はげではないのだが、まあ土質どしつの悪い草原のように、一面に青々とは茂らなかったのである。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
したがつてところによる氣候きこう土質どしつ變化へんかはなはだしく、そこにそだ樹木じゆもくや、森林しんりんも、おのづと、いろ/\ちがつてゐます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
そして、おくへすすめば、すすむほど、土質どしつ肌目きめがあらく新しくなってくる。ところどころに、土をくりぬいただんがあった。段をのぼると平地ひらちになり、平地をいくと段がきりこんである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
勘次かんじ他人ひと自分じぶんることをつたときひぢ叮嚀ていねいいた。臺地だいちにははやしあひだ陰氣いんきはたけ開墾かいこんされてあつた。かれ開墾地かいこんち土質どしつ作物さくもつとを非常ひじやう注意ちういた。また村落むらがあつてひろはたけ展開てんかいした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
所へ汽車が轟と鳴つて孟宗藪のすぐしたを通つた。根太ねだの具合か、土質どしつ所為せゐか座敷が少しふるへる様である。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
元来旅順ほど小山が四方よも割拠かっきょして、禿頭を炎天にさらっている所はない。が乏しい土質どしつへ、遠慮のない強雨ごううがどっと突き通ると、傾斜の多い山路の側面が、すぐ往来へくずれ出す。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)