国元くにもと)” の例文
旧字:國元
みちの二三丁も歩いたが、桂はその間も愉快に話しながら、国元くにもとのことなど聞き、今年のうちに一度故郷くにに帰りたいなどいっていた。
非凡なる凡人 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
またそうでもなく、嫁いでからも長く島の内の家にあったのを、彼女の遺言か何かによって国元くにもとへ届けたとも想像される。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
もっとちちときみかどからいだされ、いつもおそばつかえるとて、一年いちねん大部だいぶ不在勝るすがち、国元くにもとにはただおんな小供こどものこってるばかりでございました……。
やがて電車通でんしやどほりいへけんかりると、をとこ国元くにもとから一よめつたことのある出戻でもどりのいもうとに、人好ひとずきのよくないむづかしい母親はゝおやとがたゝめ
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
じつは与次郎がとうてい返しそうもないから、三四郎は思いきって、このあいだ国元くにもとへ三十円の不足を請求した。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と、舌打ちして、その残念さをくり返しているのは、尤もな理由のあることで、国元くにもとの尾張城からこの江戸屋敷へ移ってきて以来、彼が心ひそかに探っている目標がその切支丹きりしたん屋敷であったのです。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『そうではありませぬ……。国元くにもとやかたはじめておにかかりました……。』
国元くにもとの老いたる親どもが、にわかに、病気のよしゆえ」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ただそのさいなにより好都合こうつごうであったのは、ひめ父君ちちぎみめずらしく国元くにもとかえってられたことで、御自身ごじしん采配さいはいって家人がじん指図さしずし、心限こころかぎりの歓待もてなしをされために、すこしの手落ておちもなかったそうでございます。