困苦こんく)” の例文
わづかに其地をれば味ひならず、その味ひ美なるものは北海より長江ちやうかうさかのぼりて困苦こんくしたるのにあたれるゆゑならん。うを急浪きふらう困苦くるしめば味ひかならず甘美うまきもの也。
退身たいしん流浪るらうの身と成りしが二君に仕へるは武士さむらひ廉恥はぢいる所成れ共座してくらへば山もむなし何れへか仕官しくわんつかんと思ひしに不幸にも永のわづらひに夫も成らず困苦こんくに困苦を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いかなる困苦こんくと欠乏とになやもうとも自分は正しきものである! かく考えることによってわしは自分の不幸を支えていた。しかしわしはそれがあやしくなりだした。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
実際じっさいひさしいあいだの心労しんろう老年ろうねんに、この最後さいご困苦こんくくわわって、かれはもう自分をささえる力をうしなっていた。自分でもどれほどひどくなっているか、かれは知っていたろうか。
かれらの困苦こんくはどんなであったかを想像そうぞうしてくれたまえ。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
産終うみをはるまでの困苦こんくのために尾鰭をひれそこなやせつかれ、ながれにしたがひてくだり深淵ふかきふちある所にいたればこゝにしづつかれやしなひ、もとのごとく肥太こえふとりてふたゝながれさかのぼる。
われわれは同じ日にこの孤島ことうに流された。同じ船で。それゆえに同じ日に、同じ船でこの島を去らねばならない。われわれはいかほどの困苦こんくをともにしてきたことか。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
種々と申上げたな全體ぜんたいおのれは何と心得居るや汝等夫婦は貧窮ひんきうせまりて困苦こんくするを愍然ふびんに思ひ是迄此段右衞門が樣々さま/″\見繼みついやつた其恩義を忘れし爰な恩知ずの大膽者だいたんものとはおのれがことなり然るを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
遣込つかひこみのこり少なに成ける程に心は彌猛やたけに思へどもなほ如何に共せんすべなく必竟ひつきやう斯る難澁なんじふに及ぶと云も兒の有故身の振方ふりかたも成ぬなり此上親子おやこ餓死うゑじにに成行事のかなしさよいつそ此子も妻諸共に死んでくれなば此樣に今の困苦こんく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)