可憐いぢら)” の例文
あはれむだらうか? いとふだらうか? それともまた淺猿あさましがるだらうか? さうしてあの可憐いぢらしくも感謝かんしや滿ちた忠實ちうじつ愛情あいぢやう
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
信如は田町の姉のもとへ、長吉は我家のかたへと行別れるに思ひの止まる紅入の友仙は可憐いぢらしき姿を空しく格子門の外にと止めぬ。
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
飛びつくといつたやうな可憐いぢらしさは微塵みぢんもなかつたが、決して卑屈ではなかつたし、柔順では尚更なかつた。
チビの魂 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
信如は田町の姉のもとへ、長吉は我家のかたへと行別れるに思ひのとどまる紅入べにいりの友仙は可憐いぢらしき姿を空しく格子門の外にととどめぬ。
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
彼はこの出来事を、思ひのほか重大視してゐる彼女の心を、今までにもしば/\経験する機会をもつてゐた。それはむしかつて見たこともなかつたやうな、彼女の可憐いぢらしさだとしか思へなかつた。
花が咲く (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
わびるやうになぐさめられて、それでもと椀白わんぱくへず、しくしくきに平常つね元氣げんきなくなりて、悄然しよんぼりとせし姿すがた可憐いぢらし。
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
杉田は、それほど酔つても、猪口を措かうとしない今夜のN—子の、I—子を通しての可憐いぢらしい感情に、始終周囲の人々に対して、あやふやな胡麻化しで通して来た彼の気持や態度に恥を感じた。
草いきれ (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
後刻のち學校がくかうはうぜの約束やくそく信如しんによ田町たまちあねのもとへ、長吉ちようきち我家わがやかたへと行別ゆきわかれるにおもひのとゞまる紅入べにいり友仙ゆうぜん可憐いぢらしき姿すがたむなしく格子門かうしもんそとにととゞめぬ。
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
是非ぜひ此文これ御覽ごらんなされて、一寸ちよつとなにとかふてくだされ、よう姉樣ねえさま、よう姉樣ねえさま、おねがひ、此拜これ、とて紅葉もみぢはす可憐いぢらしさ、なさけふかき女性によしやうの、此事これのみにてもなみだ價値あたひはたしかなるに
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)