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叔公
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をぢさん
袖を
捲いて
面を
拂へば、
遙に
其の
雲の
中に、
韓湘あり。
唯一人、
雪を
冒して
何處よりともなく、やがて
馬前に
來る。
其の
蓑紛々として
桃花を
點じ、
微笑して
一揖す。
叔公其の
後はと。
別るゝ
時一掬の
雪を
取つて、
昌黎に
與へて
曰く、
此のもの
能く
潮州の
瘴霧を
消さん、
叔公、
御機嫌ようと。
昌黎馬上に
是を
受けて
袖にすれば、
其の
雪香しく
立處に
花片となんぬとかや。
仍て
速に
館に
召返し、
座に
引いて、
昌黎面を
正うして
云ふ。
汝見ずや、
市肆の
賤類、
朝暮の
營みに
齷齪たるもの、
尚ほ
一事の
長ずるあり、
汝學ばずして
何をかなすと、
叔公大目玉を
食はす。