卑賤ひせん)” の例文
汝とまちがえられ、刑に処せられ、卑賤ひせんと醜悪とのうちに余生を終わろうとしている! それでよし。汝は正直な人間となっておれ。
ところ(六一)名高めいかうすにづるものなるに、これくに厚利こうりもつてせば、すはな(六二)下節かせつとせられ、しかうして卑賤ひせんとせられ、かなら棄遠きゑんせられん。
ゴットフリートや卑賤ひせんな人々の思い出が、いつしか彼をして、自分の真の友人らは民衆の方面にあると信ぜしめた。
卑賤ひせんにそだちたる我身わがみなればはじめより此上このうへらで、世間せけん裏屋うらやかぎれるものとさだめ、我家わがやのほかに天地てんちのなしとおもはゞ、はかなきおもひにむねえじを
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それに天稟てんぴんともいうべき筒井の言葉づかいの高雅なことは、高い官についた人の次女であることをおもわせ、卑賤ひせんのそだちである彼に勿体もったいないくらいのものであった。
津の国人 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
平民はその容貌、品格等が卑賤ひせんでありますけれども、その性質はやや正直で盗心が盛大でない。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
また名字正しき侍にはこの害なく卑賤ひせんの者は金持ちでもあてられるなどと書いてある。
化け物の進化 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
秀吉は、卑賤ひせんに生れ、逆境に育ち、特に学問する時とか教養に暮す年時などは持たなかったために、常に、接する者から必ず何か一事を学び取るということを忘れない習性を備えていた。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかして進み行く方法、即ち目的に達する手段として取るべき仕事は、車を引くもし、牛乳配達も宜し、普通に卑賤ひせんと称している労働、その種類が何であるとも少しも遠慮するの必要はない。
現代学生立身方法 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
追て御打払方しかるべしなど、または当時の形勢にては人心一致天子を守護致し、卑賤ひせんの者にても人を越え御撰挙これ無くてはとても御国威は振い申すまじなど、御政事向に拘り候国家の重事を著述致し
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
嫉妬で、そんな考へにはやまるな。否。彼等は、生きてゐるばかりでなく、支配し、救濟する。そして、神の力が到る處に擴がつてゐなければ、お前は、地獄——お前自身の卑賤ひせんの地獄にあるだらう。
何者にも、たとえ偉大なる民衆にも、阿諛あゆの言をろうしてはならないから、吾人はあえて言うのである。すべてがある所には、崇高と相並んで卑賤ひせんも存する。
その魂は貪慾どんよくであって、現在の男や女や大地や情熱や思想などを、しかも苦々しい凡庸ぼんよう卑賤ひせんなものまでも、喜んで感じ許容し観察し理解したがっていた。
卑賤ひせんにそだちたる我身わがみなれば、はじめよりこの以上うへを見も知らで、世間は裏屋に限れる物とさだめ、我家わがやのほかに天地のなしと思はゞ、はかなき思ひに胸も燃えじを
軒もる月 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
こういう芸術を徳川時代の民間の卑賤ひせんな芸人どもはちゃんと心得ていたわけである。
生ける人形 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
しんもと卑賤ひせんなり、きみこれ(五)閭伍りよごうちよりぬきんで、これ大夫たいふうへくはふ。
卑賤ひせんの親とは慕われようが、決して貴人のそうとは申されぬ
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もし善良な神が存在するならば、生ける魂のうちのもっとも卑賤ひせんなものも救われなければならない。
あのあらわな足、露わな腕、ぼろ、無知、卑賤ひせん、暗黒、それらは理想の実現のために使用し得らるるであろう。民衆を通してながめよ、さすれば真理を認め得るであろう。
数年来、平和主義的な反軍国主義的な理論が、国民のもっとも高尚な分子ともっとも卑賤ひせんな分子とによって宣伝されて、しだいに広がっていた。国家はそれを長い間放任していた。
破廉恥と卑賤ひせんとを積み上げて民衆を酔わすこと、間諜が醜業をささえる柱となって衆人を侮辱しながらかえって衆人を侮辱しながらかえって衆人を笑わせること、金ぴかのぼろであり
それは社会上の卑賤ひせんな者を解放した。人の精神をやわらげ、それを静め慰め光明を与えた。地上に文明の波を流れさした。りっぱな事業であった。フランス大革命は実に人類をきよめたのです。
すなわち卑賤ひせんなる壮大さを実現してるものである。
卑賤ひせんな歌を無邪気に歌い回る。