切符きっぷ)” の例文
そのうち、車掌しゃしょうが、切符きっぷりにきて、一人ひとりおとこまえで、なにかあらあらしくいっていたが、そのおとこを、途中とちゅうからおろしてしまった。
かたい大きな手 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「さあ」ジョバンニはこまって、もじもじしていましたら、カムパネルラはわけもないというふうで、小さなねずみいろの切符きっぷを出しました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
上等、中等の室に入りて、切符きっぷしらぶるにも、洋服きたる人とその同行者とはわずして、日本服のものはもらすことなかりき。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
切符きっぷ切りのおじいさんが聞いて見ると、便所の長方形の穴の真下に、青い水の中から、一人の男の顔が彼女の方を見上げていたというのだ。
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
私もその被害者ひがいしゃである。机の辺へ来て、何遍でも行き先を聞きただす。うるさいから「地獄じごく」というと、かまわず「ハイ地獄!」といって切符きっぷをくれる。
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
と葉子がいいながら階段をのぼると、青年は粗末な麦稈むぎわら帽子をちょっと脱いで、黙ったまま青い切符きっぷを渡した。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「おい、ここを通る切符きっぷを持ってるか?」と、ドブネズミがたずねました。「おい、切符を持ってるかったら」
光一が第一に不愉快なのは切符きっぷの売り場に大きなあぐらをかいてしりまであらわしているほていのような男が横柄おうへいな顔をしてお客を下目に見おろしていることである
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
切符きっぷも訳なく買った。乗り込んでみるとマッチ箱のような汽車だ。ごろごろと五分ばかり動いたと思ったら、もう降りなければならない。道理で切符が安いと思った。たった三銭である。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
隆吉は、千穂子より一つ下で世間で云う姉女房にょうぼうであったが、千穂子は小柄なせいか、年よりは若く見えた。実科女学校を出ると、京成けいせい電車の柴又しばまたの駅で二年ばかり切符きっぷ売りをしたりした事もある。
河沙魚 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
林の中でとまってそれをしらべてみましたら、あのみどりいろのさっきゆめの中で見たあやしい天の切符きっぷの中に大きな二まい金貨きんかつつんでありました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
手垢てあかで光った十三匹の木馬と、クッションのかなくなった五台の自動車と、三台の三輪車と、背広服の監督さんと、二人の女切符きっぷ切りと、それが
木馬は廻る (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
一人ひとりむすめは、狭苦せまくるしい自動車じどうしゃうちで、きゃくにもまれて、切符きっぷをはさむあいだも、花屋はなやみせさきにあった、水草みずくさ黄色きいろはなこころおもかべていました。
ガラス窓の河骨 (新字新仮名) / 小川未明(著)
倉地が切符きっぷを買って来るのを待ってる間、そこに居合わせた貴婦人というような四五人の人たちは、すぐ今までの話を捨ててしまって、こそこそと葉子について私語ささやきかわすらしかった。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
ところへ入口で若々しい女の笑声がきこえたから、何心なくり返ってみるとえらい奴が来た。色の白い、ハイカラ頭の、背の高い美人と、四十五六の奥さんとがならんで切符きっぷを売る窓の前に立っている。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「二人前の切符きっぷ代だけもらったよ」と新ちゃんがいった。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
こいつはもう、ほんとうの天上へさえ行ける切符きっぷだ。天上どこじゃない、どこでもかってにあるける通行券つうこうけんです。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「おじいさん、どこまでですか。」と、切符きっぷろうとしました。
一銭銅貨 (新字新仮名) / 小川未明(著)
じゃらんじゃらんと号鈴ベルが鳴る。切符きっぷはすでに買うてある。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「はいってみましょうか、私切符きっぷがあるわ」
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
「僕たちと一緒いっしょに乗って行こう。僕たちどこまでだって行ける切符きっぷ持ってるんだ。」
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
九、ジョバンニの切符きっぷ
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)