入物いれもの)” の例文
麦焦むぎこがしを喰わせるものと見えて麦焦しの入物いれものがその端にある。また差入物というような訳と見えて少しよい食物もそこに置いてあります。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
と云いながら入物いれものごとほうり付けましたが、此の皿は度々たび/\焼継屋やきつぎやの御厄介になったのですから、おふくろ禿頭はげあたま打付ぶッつかってこわれて血がだら/\出ます。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「それから半刻ばかり經つて入物いれものを取りに行くと、お舟と和助は何處からか歸つて來て、二人そつぽを向いて坐つて居たといふぢやありませんか」
入物いれもの其方そつちのですが、そのつまらん中身なかみ持參ぢさんですとひたいところを、ぐツと我慢がまんして、余等よら初對面しよたいめい挨拶あいさつをした。
元来印籠は印の入物いれものであるが、携帯用の薬入れとしても重宝がられた。胴乱もほぼ同じく、印、薬などの入物で腰に下げてたずさうものであってしばしば両者にけじめはない。
樺細工の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
猫の入物いれものとかで、わらで造った行火あんかのようなものが置いてある。私には珍らしかった。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
つい此間自分も蟇口から札を一枚拔取られたので、他人事ひとごととは思はれなかつた。入物いれものごと取るので無く、目立たないやうに一枚ぬき取る方法迄同じだとすると、同一犯人である事は確かだ。
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
入物いれものが鎧櫃であるから、それに取りあわせて紅い雫を血だという。
三浦老人昔話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「これはまた妙ね。お酒か何かの入物いれものじゃないの」
リギ山上の一夜 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
一人もらたくのぞみと云ふは他ならず何事も拔目ぬけめなく實家の立派なる持參金の澤山たくさんある養子なりなどと云ひ又奉公人が風邪かぜでも引てると人と入物いれものは有次第なり米がいらなくてよいなどと戲談おどけにも云ふ程の吝嗇りんしよくれば養子の周旋せわ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いろいろな入物いれものとを取り揃えろ。
入物いれものを持っているか」
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
入物いれものの蓋を取りけて水飴を取りにかゝるから、川添富彌がはてなと見て居ります。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
眼前めのまへにあるソースやからし入物いれものだの、ごちや/\ならべた洋酒のびんだの、壁紙で貼りつめた壁だの、その壁にかゝる粗末の額、ビイルの広告などは、反つて私の身を置く場所にふさはしかつた。
(新字旧仮名) / 島崎藤村(著)