兜町かぶとちやう)” の例文
わたしが何かの話の工合で、先方の父親に兜町かぶとちやうの景気を一寸うはさした時、若者が露骨にいやな顔を見せたことも、わたしは見逃みのがさなかつた。
愚かな父 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
兜町かぶとちやうの仲買屋に書記が入用との話ゆゑ、行つて見るとう新しい人が入つて居た。「運の悪い時は何所まで行つても駄目です。」としよげ切つて居る。
茗荷畠 (新字旧仮名) / 真山青果(著)
それからずつと素人しろうとになつて母と二人で、前から関係のある兜町かぶとちやうの男から、時々支給を仰ぎながら細々暮らしてゐた古い商売友達のかをるが、浅草のカフヱに出てゐて
のらもの (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
成程なるほど子分こぶん多人数たにんずるのは子槌こづちで、れから種々いろ/\たからしますが、兜町かぶとちやうのおたくつて見ると子宝こだからの多い事。甲「だい国立銀行こくりつぎんこう大黒だいこくえん十分じふぶんります。 ...
七福神詣 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
いま兜町かぶとちやう山一商會やまいちしやうくわい杉野喜精氏すぎのきせいしは、先生せんせい舊知きうちで、その時分じぶん名古屋なごや愛知銀行あいちぎんかうの——うもわたしあま銀行ぎんかうにはゆかりがないから、やくづきはなんといふのからないが
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
兜町かぶとちやうすぢからの話ぢや、一週間以内に戦争がはじまるさうだ、さうなると、もう完全な悪時代だからね、金があれば田舎へすつ込んで鶏でも飼つてこの反動期を切り抜けるんだがなア、いやア
現代詩 (新字旧仮名) / 武田麟太郎(著)
あのやうに乞食こじきよばはりしてもらおんし、龍華寺りうげじどれほど立派りつぱ檀家だんかありとらねど、わがあねさま三ねん馴染なじみ銀行ぎんこう川樣かわさま兜町かぶとちやう米樣よねさまもあり、議員ぎいん短小ちいさま根曳ねびきしておくさまにとおほせられしを
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)