児童こども)” の例文
旧字:兒童
全体大切な児童こども幾百人なんびゃくにんよせるのだもの、丈夫な上に丈夫に建るのが当然あたりまえだ。今日一つ原に会ってこの新聞を見せてやらなければならん
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
丑松が根津村ねづむらの学校へ通ふやうになつてからは、もう普通なみ児童こどもで、誰もこの可憐な新入生を穢多の子と思ふものはなかつたのである。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
〽圓遊すててこ、談志の釜掘り、遊三ゆうざのよかちょろ、市馬いちばの牡丹餅——今もこういう寄席の竹枝こうたが、時おり、児童こどもくちにのぼる。
随筆 寄席風俗 (新字新仮名) / 正岡容(著)
山奥の児童こどもにも似合わないかしこいことを考え出して、既にかつてえられぬ虐遇ぎゃくぐうこうむった時、夢中になって走り出したのである。
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
トムちやんのお母さまが学校に勤めるやうになつてから、それを作曲して学校の児童こども達に歌はせるやうにしました。歌は「愛の歌」と名づけられました。
女王 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
その弟も今ではろくに兄の家へ寄りつかず、勝手な方面に彷徨さまよい歩いているが、うして母親の前に立って考えると、弟は矢張やはり頼りない小さな児童こどものような気がして
秘められたる挿話 (新字新仮名) / 松本泰(著)
「なるほど、ばあさんの手蹟だ。児童こどもにも読めるように、仮名かなまで振ってあら」
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
半蔵は以前の敬義学校へ児童こどもを教えに通った時と同じようなはかまを着け、村夫子そんふうしらしい草履ぞうりばきで、それに青いふきの葉を頭にかぶっている。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
意気地がないから親一人いもと一人養うことも出来ずさ、下宿屋家業までさして置いて忠孝の道を児童こどもに教えるなんて、随分変った先生様もあるものだね。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
いくら下りだって甲府までは十里近くもある路を、夜にかかって食物の準備よういも無いのに、足ごしらえも無しで雪の中を行こうとは怜悧りこうのようでも真実ほんと児童こども
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
まるで児童こどもあつかいである。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
働好な、壮健たつしやな、人の好い、しかも子の無い叔母は、いつまでも児童こどものやうに丑松を考へて居るので、其児童扱こどもあつかひが又、些少すくなからず丑松を笑はせた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
拾ったとか、なくなったとか、落したとかいう事は多数の児童こどもを集めていることゆえ常に有り勝で怪むにたらないのが、今突然この訴えに接して、自分はドキリ胸にこたえた。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
渉らうとしても渉り得ない二人の児童こどもが羨ましがつてび叫ぶを可憐あはれに思ひ、汝達には来ることの出来ぬ清浄の地であるが、然程に来たくば渡らしてるほどに待つて居よ
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
半蔵がたもとの中にいっぱい蜜柑みかんを入れていてよく村の児童こどもに分け与えるような幼いものの友だちであったと言い、自分もまたその蜜柑に誘われてお師匠さまの家に通いはじめ
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
わたろうとしても渉り得ない二人の児童こどもが羨ましがってび叫ぶを可憐あわれに思い、そなたたちには来ることのできぬ清浄の地であるが、さほどに来たくば渡らしてやるほどに待っていよ
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
いづれも学問する児童こどもらしい顔付の殊勝さ。弁当箱を振廻して行くもあれば、風呂敷包を頭の上にせて行くもある。十露盤そろばん小脇にかゝへ、上草履提げ、口笛を吹くやら、唱歌を歌ふやら。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
児童こどもなかの遊びにも片親無きは肩すぼる其の憂き思を四歳よつより為せ、六歳むつといふにはまゝしき親を頭に戴く悲みを為せ、雲の蒸す夏、雪の散る冬、暑さも寒さも問ひ尋ねず、山に花ある春の曙
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
左様ならと清吉は自己おのが仕事におもむきける、後はひとりで物思ひ、戸外おもてでは無心の児童こども達が独楽戦こまあての遊びに声〻喧しく、一人殺しぢや二人殺しぢや、醜態ざまを見よかたきをとつたぞとわめきちらす。
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
眠れる児童こどもも我知らず夜具踏み脱ぐほど時候生暖かくなるにつれ、雨戸のがたつく響きはげしくなりまさり、闇にまるる松柏のこずえに天魔のさけびものすごくも、人の心の平和を奪え平和を奪え
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
さようならと清吉は自己おのが仕事におもむきける、後はひとりで物思い、戸外おもてでは無心の児童こどもたちが独楽戦こまあての遊びに声々かしましく、一人殺しじゃ二人殺しじゃ、醜態ざまを見よかたきをとったぞとわめきちらす。
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)