事態じたい)” の例文
刀をとりに行ったものであろう左手に長い刀を下緒さげおといっしょに引っつかんで、その面相羅刹らせつのごとく、どうも事態じたいがおだやかでない。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
自分じぶん收入以上しうにふいじやうくらしをして、むをぬから借金しやくきんつゞけてると事態じたいであるからして、左樣さやう状態じやうたいくににはかねさぬとふのが英米えいべい立前たてまへである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
彼はようやく生駒いこまたきの前に今ついたのであった。彼にはまだこの場の事態じたいがのみこめていなかった。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それから三日目、またまたかれらは、事態じたいのますます切迫せっぱくしたのを知る一新事件にであった。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
事態じたいの急を知って、安土の信長は、さきに子の信忠や、諸将を派遣はけんしたが、今やまた、毛利家の第二戦線が、上月城の包囲という形を取って、味方を二分した情勢を知り、この上はと、自身
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
事態じたいありのまゝを相槌の打ち方に一寸響かせた。
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
しかも悲しむべし、事態じたいはその通りなのである。
事態じたいはそんなものをつてはゐられなかつた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
ぐわつ以來いらい外國貿易ぐわいこくぼうえき状勢じやうせい金解禁きんかいきんたいする諸般しよはん準備じゆんび程度ていどよりて、かくごと事態じたい發生はつせい財界ざいかい急激きふげき波動はどうしやうずることなきことをしんずるものである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
竹童ちくどうわしにつられて走ったのをきっかけに、とめるまもなく、一とうのひとびとが矢来やらいをこえてこういう事態じたいをひきおこしたので、その成行なりゆきをあんじている武田伊那丸たけだいなまる小幡民部こばたみんぶのふたりである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)