ひから)” の例文
茶釜ちやがまがちう/\とすこひゞきてゝしたとき卯平うへいひからびたやうにかんじてのどうるほさうとしてだるしりすこおこしてぜんうへ茶碗ちやわんのばした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
後の首筋を蒼くして、無暗むやみに御部屋の雑巾掛や御掃除をさせて、物を仰るにも御声が咽喉のどひからびついたようになります。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
一杯いっぱい雛壇ひなだんのやうな台を置いて、いとど薄暗いのに、三方さんぽう黒布くろぬの張廻はりまわした、壇の附元つけもとに、流星ながれぼし髑髏しゃれこうべひからびたひとりむしに似たものを、点々並べたのはまとである。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
蜜柑は皮の厚いのに酸味が多くて皮の薄いのに甘味が多い。貯えた蜜柑の皮に光沢があって、皮と肉との間に空虚のあるやつは中の肉のひからびておることが多い。
くだもの (新字新仮名) / 正岡子規(著)
ひからび切つた笑ひが、又ヘラヘラと小屋の天井に響いて四方へ鬼氣を撒き散らします。
一種の青臭い気が鼻に浸みて、それが為めに咽喉のんどひからびるのを感じた。私は頭から、大きな黒い手で押え付けられるような気持がした。二本の真黒い、太い、烟突の周囲は幾尺あるか分らない。
暗い空 (新字新仮名) / 小川未明(著)
店一杯に雛壇ひなだんのような台を置いて、いとど薄暗いのに、三方を黒布で張廻した、壇の附元つけもとに、流星ながれぼし髑髏しやれこうべひからびたひとりむしに似たものを、点々並べたのはまとである。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
雲白く、秀でたる白根しらねが岳の頂に、四時の雪はありながら、田は乾き、畠は割れつつ、瓜の畠の葉も赤い。来た処も、く道も、露草は胡麻ごまのようにひからび、蓼の紅は蚯蚓みみずただれたかと疑われる。
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)