中納言ちゅうなごん)” の例文
「はなはだ恐縮ですが、中納言ちゅうなごん様の御通行は来春のようにうけたまわります。当宿しゅくではどんな心じたくをいたしたものでしょうか。」
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
中納言ちゅうなごんはさっそく天子てんしさまの御所ごしょがって、大事だいじむすめ大江山おおえやまおにられたことをくわしくもうげて、どうぞ一にちもはやくおに退治たいじして
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
一寸見廻しただけでも、長男重盛しげもりは、内大臣ないだいじん左大将さだいしょう、次男宗盛むねもりは、中納言ちゅうなごん右大将、三男知盛とももり三位さんみの中将、孫の維盛これもり四位しいの少将といった具合である。
前栽せんざいつくろはせ給へる頃人々あまた召して御遊ぎょゆうなどありける後定家ていか中納言ちゅうなごんいまだ下﨟げろうなりける時に奉られける
蘆刈 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「姓は飛鳥井、京都の産、伶人の身分で笛を吹く? 失礼ながら貴殿には、中納言ちゅうなごん飛鳥井公定卿きみさだきょうのご縁辺ではござらぬかな?」地丸の態度は慇懃いんぎんになった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
弟には忠利が三斎さんさいの三男に生まれたので、四男中務なかつかさ大輔たゆう立孝たつたか、五男刑部ぎょうぶ興孝おきたか、六男長岡式部寄之よりゆきの三人がある。いもとには稲葉一通かずみちに嫁した多羅姫たらひめ烏丸からすまる中納言ちゅうなごん光賢みつかたに嫁した万姫まんひめがある。
阿部一族 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
翌年は文官に転じて中納言ちゅうなごん殿と称えられなければならぬようになるからして、それが果してあざなであるやら、はたまた我々官吏が長官に向って、長官といい局長というと同じ意味の通称やら
名字の話 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
中務卿親王なかつかさきょうしんのう上野こうずけ親王しんのう中納言ちゅうなごんみなもと朝臣あそんがおられます」
源氏物語:51 宿り木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
中納言ちゅうなごん奥方おくがたもびっくりして、ぬほどかなしがって、上手じょうずうらなしゃにたのんでみてもらいますと、やはり大江山おおえやまおにられたということがわかりました。
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
それで一寸法師いっすんぼうしのおじいさんが、堀河ほりかわ中納言ちゅうなごんというえらい人で、むじつのつみ田舎いなかわれて出来できた子が、一寸法師いっすんぼうしのおとうさんで、それからおかあさんという人も
一寸法師 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
おにおおぜいつかまえておいたむすめたちの中には、池田いけだ中納言ちゅうなごんのおひめさまもじっていました。頼光らいこうおにのかすめた宝物たからものといっしょにむすめたちをつれて、めでたくみやこかえりました。
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)