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りようがん
此時艦頭に
立てる
武村兵曹は、
右鬢に
微傷を
受けて、
流るゝ
血汐の
兩眼に
入るを、
拳に
拂つて、キツと
見渡す
海の
面、
電光の
如く
近づき
來つた
海底戰鬪艇は
『よし、さらば、
詰問せん』
王樣は
冱々しからぬ
御容子にて、
腕を
拱み、
眉を
顰め、
兩眼殆んど
茫乎なる
迄、
料理人を
凝視めて
居られましたが、やがて
太い
聲で、『
栗饅頭は
何から
製られるか?』
日出雄少年をば
眞個の
海軍々人の
手に
委ねんとせし
彼の
父の
志が、
今や
意外の
塲所で、
意外の
人に
依て
達せらるゝ
此嬉しき
運命に、
思はず
感謝の
涙は
兩眼に
溢れた。
もし
手近かな
例が
欲しければ、
小規模ではあるけれども、
浦賀海峽の
左右兩岸を
擧げることが
出來る。