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みとほし
見透の
裏は
小庭もなく、すぐ
隣屋の
物置で、
此處にも
犇々と
材木が
建重ねてあるから、
薄暗い
中に、
鮮麗な
其淺黄の
手絡と
片頬の
白いのとが、
拭込むだ
柱に
映つて、ト
見ると
露草が
咲いたやうで
蒸暑い
夜で、
糊澤山な
浴衣を
抱きながら、
涼んで
居ると、
例の
柳の
葉越に
影が
射す、
五日ばかりの
月に
電燈は
點けないが、
二階を
見透の
表の
縁に、
鐵燈籠の
燈ばかり
一つ、
峰の
堂でも
見るやうに
柳屋は
淺間な
住居、
上框を
背後にして、
見通の
四疊半の
片端に、
隣家で
帳合をする
番頭と
同一あたりの、
柱に
凭れ、
袖をば
胸のあたりで
引き
合はせて、
浴衣の
袂を
折返して