“ふりかえ”のいろいろな漢字の書き方と例文
語句割合
振返47.9%
振顧22.9%
振反8.3%
8.3%
揮返4.2%
回首2.1%
振廻2.1%
顧盻2.1%
顧眄2.1%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
けたたましき跫音あしおとして鷲掴わしづかみえりつかむものあり。あなやと振返ふりかえればわがいえ後見うしろみせる奈四郎なしろうといへるちからたくましき叔父の、すさまじき気色けしきして
竜潭譚 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
鶴さんは先へ立って、近所隣をさっさと小半町も歩いてから振顧ふりかえったが、お島はクレーム色のパラソルにおもてを隠して、長襦袢ながじゅばんすそをひらひらさせながら、足早に追ついて来た。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
吃驚びっくりして振反ふりかえると、下女の松めが何時いつ戻ったのか、ともないつら罅裂えみわれそうに莞爾にこつかせて立ってやがる。私は余程よっぽど飛蒐とびかかって横面をグワンと殴曲はりまげてやろうかと思った。腹が立って腹が立って……
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
疑いつつふりかえりゆくと、ふとこの辺の様子を横浜の景色らしく思いまぎらさしめる魔力をその塔の影は持っていた。少年がよく話の中に出して来る清魂丹の大時計というのはこれなのか。
美少年 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
と、女は背後うしろ揮返ふりかえって白いきれいな顔を見せた。彼はまたはしたないおのれの姿に気がいたのでちょっと立ちどまった。
赤い花 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
デモ土蔵の白壁はさすがにしろいだけに、見透かせば見透かされる……サッと軒端のきば近くに羽音がする、回首ふりかえッて観る……何もまなこさえぎるものとてはなく、ただもう薄闇うすぐら而已のみ
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
エストニアの伝説に、樵夫きこり二人林中で蛇をあまた殺し行くと、ついに蛇の大団堆おおかたまりに逢い、逃ぐるを金冠戴ける蛇王が追いはしる。一人振廻ふりかえり斧でその頭を打つと、蛇王金塊となった。
ドコの百姓が下らぬ低級の落語に見っともない大声を出して笑うのかと、顧盻ふりかえって見ると諸方の演説会で見覚えの島田沼南であった。
三十年前の島田沼南 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
そこで足をゆるめると、老人も足をゆるめて、うしろの方を顧眄ふりかえってきょときょととしたが、そのさまが如何にも人間らしくないので、又追っかけた。
虎杖採り (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)