トップ
>
振顧
>
ふりかえ
ふりがな文庫
“
振顧
(
ふりかえ
)” の例文
振向くか——
振顧
(
ふりかえ
)
るか——と太郎左衛門を始め、取り残された人々は、縁や庭垣から見まもっていたが、武蔵は振向かなかった。
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
鶴さんは先へ立って、近所隣をさっさと小半町も歩いてから
振顧
(
ふりかえ
)
ったが、お島はクレーム色のパラソルに
面
(
おもて
)
を隠して、
長襦袢
(
ながじゅばん
)
の
裾
(
すそ
)
をひらひらさせながら、足早に追ついて来た。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
不思議さのあまり呆然そこに佇んでいると、不意に背後から私の
利腕
(
ききうで
)
をぐッと掴んだものがあります、
愕
(
おどろ
)
いて
振顧
(
ふりかえ
)
ると見も知らない男が私の方を睨みつけながら、ぐいぐい腕を引張ります。
流転
(新字新仮名)
/
山下利三郎
(著)
月江も馬上から
振顧
(
ふりかえ
)
って、次郎の方へ、何か二声三声いったようですが、それは多分、彼を力づける慰めのことばであったことでしょう。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「何をするんだよ」お島はいきなり
振顧
(
ふりかえ
)
ると、平手でぴしゃりとその顔を
打
(
ぶ
)
った。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
▼ もっと見る
灯ともし頃の八王子の町を、下げ髪の美女が銀毛の駒に乗り、その供として
野袴
(
のばかま
)
の屈強な侍が付いて歩く奇観に、往来の目が
振顧
(
ふりかえ
)
ります。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
駆けながら見て通った岐れ道の道しるべには、どうやらこう記してあったように読まれましたが……今は何を
振顧
(
ふりかえ
)
っているいとまもない。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼は毎日、土蔵の中で、その作品作風を見て、自己の工夫を
凝
(
こら
)
した。そして今——初めて松代の長国寺内でやった自分の行為や言葉を、冷静に
振顧
(
ふりかえ
)
って
山浦清麿
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そしてふと、もう一度、子や孫たちの姿を
振顧
(
ふりかえ
)
ったが、五郎右衛門の顔いろが何となく
蒼白
(
あおじろ
)
く見えたので
剣の四君子:02 柳生石舟斎
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
今、通って来た右側の樹立の奥に見えた
築地
(
ついじ
)
と屋根が、東山
殿
(
どの
)
の銀閣寺であったらしい。ふと、
振顧
(
ふりかえ
)
ると、そこの泉が
棗形
(
なつめがた
)
の鏡のように眼の下に見えたのである。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そしてしばらくやり過してから、鶴菜が振向くと、黒川大隅もこなたを
振顧
(
ふりかえ
)
っていた。
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
呪う者ばかりが
頭脳
(
あたま
)
へ映ってくる。お
甲
(
こう
)
の白い顔であり、
武蔵
(
たけぞう
)
のすがたであった。今の逆境へ落ちて来た過去を
振顧
(
ふりかえ
)
ると、武蔵がなかったらと思い、お甲に会わなかったらと彼はつい思う。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
はっと、城太郎の眼が、真剣になって
振顧
(
ふりかえ
)
った。何もかも忘れ切って運命に
尾
(
つ
)
いて歩いているかのようでも、彼の心のどこかには絶えず、見失った武蔵とお通の身を気にとめているらしかった。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
振顧
(
ふりかえ
)
ると、小一町ほどうしろに、がやがや声をあげながら野武士のかたまりが騒いでいる。笑止なことには、近づいては来ないのである。虚があったら
咬
(
か
)
みついて来ようとしている狼の群に似た。
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、ここへ近づいて来る跫音を
振顧
(
ふりかえ
)
って、
恟々
(
きょうきょう
)
たる眼いろになる。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼の声に、馬上の庄田喜左衛門も気がついたとみえ、
振顧
(
ふりかえ
)
って
宮本武蔵:03 水の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
振顧
(
ふりかえ
)
って、清麿はハッとした。別所で別れたお
寿々
(
すず
)
だった。
山浦清麿
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、真ん中の駕のうちから後ろを
振顧
(
ふりかえ
)
って光悦がいう——
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
お通が十歩追うと、武蔵も十歩駈けて、そして
振顧
(
ふりかえ
)
った。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ばばは、
振顧
(
ふりかえ
)
って
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
権之助も
振顧
(
ふりかえ
)
る。
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
後を
振顧
(
ふりかえ
)
った。
宮本武蔵:03 水の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
振
常用漢字
中学
部首:⼿
10画
顧
常用漢字
中学
部首:⾴
21画
“振”で始まる語句
振
振舞
振返
振袖
振向
振分
振廻
振子
振翳
振切