振顧ふりかえ)” の例文
振向くか——振顧ふりかえるか——と太郎左衛門を始め、取り残された人々は、縁や庭垣から見まもっていたが、武蔵は振向かなかった。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鶴さんは先へ立って、近所隣をさっさと小半町も歩いてから振顧ふりかえったが、お島はクレーム色のパラソルにおもてを隠して、長襦袢ながじゅばんすそをひらひらさせながら、足早に追ついて来た。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
不思議さのあまり呆然そこに佇んでいると、不意に背後から私の利腕ききうでをぐッと掴んだものがあります、おどろいて振顧ふりかえると見も知らない男が私の方を睨みつけながら、ぐいぐい腕を引張ります。
流転 (新字新仮名) / 山下利三郎(著)
月江も馬上から振顧ふりかえって、次郎の方へ、何か二声三声いったようですが、それは多分、彼を力づける慰めのことばであったことでしょう。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「何をするんだよ」お島はいきなり振顧ふりかえると、平手でぴしゃりとその顔をった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
灯ともし頃の八王子の町を、下げ髪の美女が銀毛の駒に乗り、その供として野袴のばかまの屈強な侍が付いて歩く奇観に、往来の目が振顧ふりかえります。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
駆けながら見て通った岐れ道の道しるべには、どうやらこう記してあったように読まれましたが……今は何を振顧ふりかえっているいとまもない。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は毎日、土蔵の中で、その作品作風を見て、自己の工夫をこらした。そして今——初めて松代の長国寺内でやった自分の行為や言葉を、冷静に振顧ふりかえって
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そしてふと、もう一度、子や孫たちの姿を振顧ふりかえったが、五郎右衛門の顔いろが何となく蒼白あおじろく見えたので
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今、通って来た右側の樹立の奥に見えた築地ついじと屋根が、東山殿どのの銀閣寺であったらしい。ふと、振顧ふりかえると、そこの泉が棗形なつめがたの鏡のように眼の下に見えたのである。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そしてしばらくやり過してから、鶴菜が振向くと、黒川大隅もこなたを振顧ふりかえっていた。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
呪う者ばかりが頭脳あたまへ映ってくる。おこうの白い顔であり、武蔵たけぞうのすがたであった。今の逆境へ落ちて来た過去を振顧ふりかえると、武蔵がなかったらと思い、お甲に会わなかったらと彼はつい思う。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はっと、城太郎の眼が、真剣になって振顧ふりかえった。何もかも忘れ切って運命にいて歩いているかのようでも、彼の心のどこかには絶えず、見失った武蔵とお通の身を気にとめているらしかった。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
振顧ふりかえると、小一町ほどうしろに、がやがや声をあげながら野武士のかたまりが騒いでいる。笑止なことには、近づいては来ないのである。虚があったらみついて来ようとしている狼の群に似た。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、ここへ近づいて来る跫音を振顧ふりかえって、恟々きょうきょうたる眼いろになる。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼の声に、馬上の庄田喜左衛門も気がついたとみえ、振顧ふりかえって
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
振顧ふりかえって、清麿はハッとした。別所で別れたお寿々すずだった。
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、真ん中の駕のうちから後ろを振顧ふりかえって光悦がいう——
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お通が十歩追うと、武蔵も十歩駈けて、そして振顧ふりかえった。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ばばは、振顧ふりかえって
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
権之助も振顧ふりかえる。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
後を振顧ふりかえった。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)