揮返ふりかえ)” の例文
それはまた路が不安になって来たがためであった。菊江はうしろ揮返ふりかえった。菊江は路伴みちづれになる人がないかと思ったのであった。
女の怪異 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
と、女は背後うしろ揮返ふりかえって白いきれいな顔を見せた。彼はまたはしたないおのれの姿に気がいたのでちょっと立ちどまった。
赤い花 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
菊江は無意識にうしろ揮返ふりかえった。そこにはすこし離れて歩いて来る者があった。菊江ははっと思って立ちどまった。背の高いやせぎすな男の姿が朦朧もうろうとしてあらわれた。
女の怪異 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
で、今日こそどうしても見失わないぞと思って走って往ってみると、その日は女は男の来るのを待っているように揮返ふりかえって立っていた。芳郎が近寄ると女はにっと笑って
赤い花 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
菊江はうしろの方を揮返ふりかえった。何か怪しい者がつけていはしないかと思ったがためであった。
女の怪異 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
女は坂を登りつめて、平坦な路のむこうにその背後うしろ姿を消しかけた。芳郎はその姿を見失うまいと思って走るようにあがって往った。と、その跫音あしおとが聞えたのか女はちょと揮返ふりかえった。
赤い花 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)