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さツき
(
難有う
存じます、
未だ
些とも
眠くはござりません、
前刻体を
洗ひましたので
草臥もすつかり
復りました。)
すると
何時の
間にか
今上つた
山は
過ぎて
又一ツ
山が
近づいて
来た、
此辺暫くの
間は
野が
広々として、
前刻通つた
本街道より
最つと
巾の
広い、なだらかな一
筋道。
あゝ
前刻のお
百姓がものゝ
間違でも
故道には
蛇が
恁うといつてくれたら、
地獄へ
落ちても
来なかつたにと
照りつけられて、
涙が
流れた、
南無阿弥陀仏、
今でも
悚然とする。
先刻小屋へ
入つて
世話をしましたので、ぬら/\した
馬の
鼻息が
体中へかゝつて
気味が
悪うござんす。
丁度可うございますから
私も
体を
拭きませう
此処に
居て
先刻から
休すんでござつたのが、
右の
売薬ぢや。