)” の例文
るとぞつとする。こけのある鉛色なまりいろ生物いきもののやうに、まへにそれがうごいてゐる。あゝつてしまひたい。此手このてさはつたところいまはしい。
「あのるのは、かわいそうだ。」といって、大人おとなたちにかって、同意どういもとめ、このることに反対はんたいしたでありましょう。
町はずれの空き地 (新字新仮名) / 小川未明(著)
建築用けんちくようの木材は火にてき切り又は打製石斧いしおのにてたたりしなるべし、是等をくくり合するには諸種のなわ及び蔦蔓つたづるの類を用ゐしなるべし
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
もとより云う事はあるのだから、何か云おうとするのだが、その云おうとする言葉が咽喉のどを通るとき千条ちすじれでもするごとくに
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
尺八の穴みなビューッと鳴って、一角の大刀を大輪おおわに払うと、払われたほうは気をいらって、さっとそのさき足下あしもとからずり上げる。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『えゝ只今たゞいま足下そくか御關係ごくわんけい事柄ことがらで、申上まをしあげたいとおもふのですが。』と、市役所員しやくしよゐん居並ゐなら人々ひと/″\挨拶あいさつむとした。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
烏賊いか椎茸しいたけ牛蒡ごぼう、凍り豆腐ぐらいを煮〆にしめにしておひらに盛るぐらいのもの。別に山独活やまうどのぬた。それに山家らしい干瓢かんぴょう味噌汁みそしる
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
農家の垣には梨の花と八重桜、畠には豌豆えんどう蚕豆そらまめ麦笛むぎぶえを鳴らす音が時々聞こえて、つばめが街道を斜めにるように飛びちがった。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
とその中の頭分かしらぶんらしいさむらいがいいました。それから二言ふたこと三言みこといいったとおもうと、乱暴らんぼう侍共さむらいどもはいきなりかたないてってかかりました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
められてもうれしくはないぞ。玄竹げんちく、それよりなに面白おもしろはなしでもせんか。』と、但馬守たじまのかみかほには、どうもらぬいろがあつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
小賊せいぞくかずして、すなはかたなつてゆびつてたまぬすむや、ゆびよりくれなゐいとごとほとばしりぬ。頭領とうりやうおもてそむけていはく、於戲痛哉あゝいたましいかな
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いたずらに、もてあそんでいた三味線みせんの、いとがぽつんとれたように、おせんは身内みうちつもさびしさをおぼえて、おもわずまぶたあつくなった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
ロミオ あれは自分じぶん饒舌しゃべるのをくことのきなをとこ一月ひとつきかゝってもやりれぬやうなことを、一分間ぶんかん饒舌しゃべてようといふをとこぢゃ。
で、わたくしおもってそのもんをくぐってきましたが、門内もんない見事みごと石畳いしだたみの舗道ほどうになってり、あたりにちりひとちてりませぬ。
糟谷獣医かすやじゅういは、去年のしつまってから、この外手町そとでまちしてきた。入り口は黒板くろいたべいの一部をりあけ、かたちばかりという門がまえだ。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
おもつたる大形おほがた裕衣ゆかたひつかけおび黒繻子くろじゆすなにやらのまがひものひらぐけがところえてはずとれしこのあたりのあねさまふうなり
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
カラクリがり分らア。全くよ。俺ア、つい此間こないだ迄信者様だった。騙されたのも知らねえで悦んで奴等の手品に見とれていたからなア。
反逆 (新字新仮名) / 矢田津世子(著)
現に、自分が今、かみを拔いた女などは、へびを四寸ばかりづゝにつて干したのを、干魚ほしうをだと云つて、太刀帶たてはきの陣へ賣りに行つた。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
つて、それ引揚ひきあげたが、如何どうつてえられぬので、ふたゝ談判だんぱんかうとおもつてると、友人いうじん眉山子びさんしれい自殺じさつ
後ろに突っ立って、ブッら棒に挨拶をして居るのは、二十一、二の若い男、八五郎に青瓢箪あおびょうたんと形容された、総領の幾太郎です。
あいちやんはふたゝおもつてつゞけました、『二十四時間じかんだつたわ、たしか、ハテ、それとも、十二時間じかんだつたかしら?わたしは——』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
婦人は指先に一寸きずをしてゐたのに過ぎなかつたが、医者が丁寧にしんの臓まで診察しようとしたので大分だいぶん時間が手間どつた。
いてゆくうちに、ゆびったので、ゆきうえがたれました。(*(註)杜松は檜類の喬木で、一に「ねず」又は「むろ」ともいいます)
そうして、彼は? あの激しい情熱をもって妻を愛した彼は、今は感情のれた一個の機械となっているにすぎなかった。
花園の思想 (新字新仮名) / 横光利一(著)
それだのにおなゆきいたゞいたこゝのひさしは、彼女かのぢよにそのつたこゝろあたゝめられて、いましげもなくあいしづくしたゝらしてゐるのだ。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
お三根を殺傷さっしょうした凶器きょうきは、なんであるかわからないが、なかなかあじのいい刃物はものであるらしく、頸動脈はずばりと一気に切断されていた。
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「光子さん、そんな事してたらりがないよってわらびでも採りに行きまひょ。わたしこの山に蕨や土筆つくしのたんとえてるとこよう知ってるわ」
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
こののこぎりなんなくれる家尻やじりを五つましたし、角兵ヱかくべえ角兵ヱかくべえでまた、足駄あしだばきでえられるへいを五つました。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
そこで早速さつそく理髪店とこやつてそのみゝ根元ねもとからぷつりとつてもらひました。おもてへるとゆびさして、ふものごとわらふのです。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
ながかたちよこにひらたいものとがありますが、双方共そうほうとも一方いつぽうにつまみがあり、他側たがはれるほどするどくはありませんが、にぶになつてゐます。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
西京さいきやう大坂おほさか芸妓げいこまゐつてりましたが、みな丸髷まるまげ黒縮緬くろちりめん羽織はおり一寸ちよつと黒紗くろしやれをひつけてりまして、様子やうす奥様然おくさまぜんとしたこしらへで
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
わたしはおかみさんに打ち明けて一斤半でたくさんだというわけを話して、それ以上いじょうらないようにていねいにたのんだ。
大久保おほくぼが、奈美子なみこうつくしいかみを、剃刀かみそりはさみでぢよき/\根元ねもとからまつたつてしまつたことは、大分だいぶたつてからつた。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
「それすんぢやねえ、かねえとこれつてやんぞ、あかまんまがるぞおゝいてえ」などとおつぎのいふのがきこえた。そのたび庖丁はうちやうおとむ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
弼君が佳子さんへのっかけだった。行き会うとお辞儀をするようになった。安達君と吉川君は期せずして弼君の御機嫌を取ることに一致した。
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
それは美濃の國のアヰミ河の河上の喪山もやまという山になりました。その持つてつた大刀たちの名はオホバカリといい、またカンドの劒ともいいます。
はるになるいろといふのは、まだはるになりつてゐるわけではありません。はる樣子ようす調とゝのつてつてゐることをいふのです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
かうして最初さいしよ大地震だいぢしんこらへる家屋かおくが、其後そのご三分さんぶんいち以下いか地震力ぢしんりよくによつてられることはないはずである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
およしん化物ばけものといふものは、何處どこ部分ぶぶんはなしても、一しゆ異樣いやう形相げうさうで、全體ぜんたいとしては渾然こんぜんしゆまとまつたかたちしたものでなければならない。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
一団となって襲い掛ろうとすると、敷居を踏み切って斬り込んで来る! と見せた右近、スッと退ったかと思うと、ピタリふすまってしまった。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
暫時しばらくすると箱根はこね峻嶺しゆんれいからあめおろしてた、きりのやうなあめなゝめぼくかすめてぶ。あたまうへ草山くさやま灰色はひいろくもれ/″\になつてはしる。
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
したにゐたひとつなをひきそこなつて、つながぷっつりとれて、うんわるくもしたにあつたかなへうへちてまはしました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
りにおれ地位ちゐつたとしてかんがへてても、事柄ことがら如何いかんかゝはらず、毎日まいにち葉書はがきなんのかのとつてられたにや、實際じつさいやりれまいとおもふよ。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
「まさか私に殿の御暦の中をって、すぐ八月が出るように、つないでくれとおっしゃるのではないでしょうね?」
ほととぎす (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
せ此所へ殘し置き我また別によき工夫くふうありとてかの曲者並びに女のくびつて川へ流し二人の着類きるゐを着せ替て昌次郎夫婦は甲州路かふしうぢより江戸へおもむかせたり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
面白くない勝負をして焦立いらだった仁右衛門の腹の中とは全く裏合せならない景色だった。彼れは何か思い切った事をしてでも胸をすかせたく思った。
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
片手に握つてしまへばはじも現はれない樣な百圓札の十枚ばかりは直ぐに消えてしまつた。けれどもそんな小さな金ばかりの問題ではない筈であつた。
木乃伊の口紅 (旧字旧仮名) / 田村俊子(著)
伏見の戦争が初まる三月みつき程前から再び薩州やしきに行つたり明治五年まで足掛あしかけ六年の間一度も帰つて来なかつた。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
六郎が父のくびは人々持ちかえりしが、彼素肌にてつき殺されし人は、ずだずだにられて、頭さえくだけたりき。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
わたしは彼に、君はそんなにはげしい開墾の仕事をしているから厚い長靴と丈夫な着物が入り用になり、しかもそれはじきにひどくなりれてしまう。