飴細工あめざいく)” の例文
この娘がたまと云う子で、母親がなくて、親爺おやじと二人暮らしでいると云う事、その親爺は秋葉あきはの原に飴細工あめざいく床店とこみせを出していると云う事などを知った。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
同じ仲間なかま飴屋あめやが、大道で飴細工あめざいくこしらえてゐると、白服しろふくの巡査が、あめまへはなして、邪魔になつて仕方しかたがない。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
と、甲板のうえから、艦橋が飴細工あめざいくのように曲っているのを見上げて、しきりに首をふって感心していました。
怪塔王 (新字新仮名) / 海野十三(著)
さもなくとも理髪店のビラの種類、八百屋や駄菓子屋の店の品物、子供相手の飴細工あめざいく糝粉細工しんこざいくの注文振りを見ても、ここいらに江戸ッ子が居るなと思わせられるものである。
一日二晩絶間たえまなく感心しつめて天晴あっぱれ菩薩ぼさつと信仰して居る御前様おまえさまを、縛ることは赤旃檀しゃくせんだん飴細工あめざいくの刀でほりをするよりまだ難し、一昨日おとといの晩忘れて行かれたそれ/\その櫛を見ても合点がてんなされ
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
その他羽子板はごいた押絵おしえ飴細工あめざいく、菊人形、活人形いきにんぎょう覗機関のぞきからくり声色使こわいろつかいの雑技あり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
およしなさればいのに、りもののかごに、つてたしぼりの山茶花さゞんくわしろ小菊こぎく突込つツこんで、をかしくつまんだり、えだいたり、飴細工あめざいくではあるまいし……つゐをなすもののひとがらもちやうい。
鳥影 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
まるで飴細工あめざいくのタヌキみたいな太鼓腹だ。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
を立てて恋をするのは、火事頭巾かじずきんかぶって、甘酒を飲むようなものである。調子がわるい。恋はすべてをかす。角張かどばった絵紙鳶えだこ飴細工あめざいくであるからは必ず流れ出す。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)