險惡けんあく)” の例文
新字:険悪
「うむ、こまつたなあ」卯平うへいふかしわしがめていつた。さうしてあとは一ごんもいはない。おしな病状びやうじやう段々だん/\險惡けんあくおちいつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
そのうちにも、病人びやうにん容態ようたいは、刻々こく/\險惡けんあくになつてゆくので、たうとう、そこからあまとほくない、府下ふか××むらのH病院びやうゐん入院にふゐんさせるより仕方しかたがなくなつた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
つみばつ」はじつにこの險惡けんあくなる性質せいしつ苦慘くさん實况じつけうを、一個いつこのヒポコンデリアかんうへ直寫ちよくしやしたるものなるべし。
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
戸外體操には、險惡けんあくな日であつた。雨が降つてゐるといふのではなかつたが、しと/\した黄色の霧で暗くなつてゐた。地面はすつかり、まだ昨日の大雨でジメ/\してゐた。
佛人フツジンごとくに輕佻けいてふうごやすきにあらず、默念焦慮もくねんせうりよして毒刄どくじん懷裡かいりたくはふるは、じつ露人ロジン險惡けんあくなる性質せいしつなり。
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
勘次かんじはるあひだにおしなの四十九にちすごした。白木しらき位牌ゐはいこゝろばかりの手向たむけをしただけで一せんでもかれ冗費じようひおそれた。かれふたゝ利根川とねがは工事こうじつたときふゆやうや險惡けんあくそら彼等かれら頭上づじやうあらはした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)