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隣座敷
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となりざしき
始めけるが又
隣座敷に是も江の島へ
參詣と見えて藝妓二三人を
引連陽氣に酒を
呑居たるに重四郎が
同道したる者皆々
心安き
體にて彼是聲など懸合ふ
故樣子を
鏡のおもてにうつしたおのが
姿を
見詰めたまま、
松江は
隣座敷にいるはずの、
女房を
呼んで
見た。が、いずこへ
行ったのやら、
直ぐに
返事は
聞かれなかった。
まだ
思ひ
出す
事がある。
先生がこゝで
獨酌……はつけたりで、
五勺でうたゝねをする
方だから
御飯をあがつて
居ると、
隣座敷で
盛んに
艷談のメートルを
揚げる
聲がする。
長吉は
隣座敷の母親を
気兼して
何とも答へる事ができない。お
糸は
構はず
隣座敷では、
母が
燈芯をかき
立てたのであろう。
障子が
急に
明るくなって、
膳立をする
音が
耳に
近かった。
よた/\と
引返し「おつけの
實は
何とかいつたね。さう、
大根か。
大根、
大根、
大根でセー」と
鼻うたで、
一つおいた
隣座敷の、
男の
一人客の
所へ、どしどしどしん、
座り
込んだ。
「お
袋が、
隣座敷にいた
外にゃ、これぞといって、
人らしい
者ァいやァいたしません」