隣座敷となりざしき)” の例文
始めけるが又隣座敷となりざしきに是も江の島へ參詣さんけいと見えて藝妓二三人を引連ひきつれ陽氣やうきに酒をのみたるに重四郎が同道どうだうしたる者皆々心安こゝろやすていにて彼是聲など懸合ふゆゑ樣子やうす
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
かがみのおもてにうつしたおのが姿すがた見詰みつめたまま、松江しょうこう隣座敷となりざしきにいるはずの、女房にょうぼうんでた。が、いずこへったのやら、ぐに返事へんじかれなかった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
まだおもことがある。先生せんせいがこゝで獨酌どくしやく……はつけたりで、五勺ごしやくでうたゝねをするかただから御飯ごはんをあがつてると、隣座敷となりざしきさかんに艷談えんだんのメートルをげるこゑがする。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
長吉ちやうきち隣座敷となりざしきの母親を気兼きがねしてなんとも答へる事ができない。おいとかまはず
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
隣座敷となりざしきでは、はは燈芯とうしんをかきてたのであろう。障子しょうじきゅうあかるくなって、膳立ぜんだてをするおとみみちかかった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
よた/\と引返ひきかへし「おつけのなんとかいつたね。さう、大根だいこんか。大根だいこん大根だいこん大根だいこんでセー」とはなうたで、ひとつおいた隣座敷となりざしきの、をとこ一人客ひとりきやくところへ、どしどしどしん、すわんだ。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「おふくろが、隣座敷となりざしきにいたほかにゃ、これぞといって、ひとらしいものァいやァいたしません」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)