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陰森
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いんしん
ふりがな文庫
“
陰森
(
いんしん
)” の例文
陰森
(
いんしん
)
な、何か、やりきれないほどな、短くて長い気のする
刻々
(
こっこく
)
が過ぎている。……ケロ、ケロロ、と池の初蛙もまた啼きだしていた。
私本太平記:05 世の辻の帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
……そうして
陰森
(
いんしん
)
としたこの小家、切り戸から出た若者の死骸、その死骸の異様な死相、死骸を運んで行った覆面の武士たち。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
陰森
(
いんしん
)
として肌に迫る冷気の中に投影しあらわれた幽界の冥鬼が、生前の怨み、死後の執念を訴えるもののようであった。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
障子
(
しょうじ
)
一重
(
ひとえ
)
隔てた向うには、さもただならない秘密が潜んでいそうな、
陰森
(
いんしん
)
としたけはいがあったと云います。
妖婆
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
燕府
(
えんぷ
)
を
挙
(
こぞ
)
って殺気
陰森
(
いんしん
)
たるに際し、天も
亦
(
また
)
応ぜるか、時
抑
(
そも
)
至れるか、
颷風
(
ひょうふう
)
暴雨卒然として
大
(
おおい
)
に起りぬ。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
▼ もっと見る
それでも
矢来
(
やらい
)
の坂を
上
(
あが
)
って酒井様の
火
(
ひ
)
の
見櫓
(
みやぐら
)
を通り越して寺町へ出ようという、あの五六町の一筋道などになると、昼でも
陰森
(
いんしん
)
として、大空が曇ったように
始終
(
しじゅう
)
薄暗かった。
硝子戸の中
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
翁は
狼狽
(
あわ
)
てて
懐中
(
ふところ
)
よりまっち取りだし、
一摺
(
ひとす
)
りすれば一間のうちにわかに
明
(
あか
)
くなりつ、人らしきもの見えず、しばししてまた暗し。
陰森
(
いんしん
)
の気
床下
(
ゆかした
)
より起こりて翁が懐に入りぬ。
源おじ
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
雲
(
くも
)
は
黒
(
くろ
)
くなつた。
淵
(
ふち
)
は
愈々
(
いよ/\
)
暗
(
くら
)
い。
陰森
(
いんしん
)
として
沈
(
しづ
)
むあたりに、
音
(
おと
)
もせぬ
水
(
みづ
)
は
唯
(
たゞ
)
鱗
(
うろこ
)
が
動
(
うご
)
く。
十和田湖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
死せる都府の
陰森
(
いんしん
)
の氣は、光明に宜しからずして幽暗に宜しければなり。われは客亭の窓を開いて立ち、黒き小舟の矢を射る如く黒き波を
截
(
き
)
り去るを望み、
前
(
さき
)
の舟人の歌ひし戀の歌を憶ひ起せり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
弥生の悲鳴が、尾を引いて
陰森
(
いんしん
)
たる樹立ちに
反響
(
こだま
)
した。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
そは「
夜
(
よる
)
」なり、
陰森
(
いんしん
)
として
眠
(
ねむり
)
を誘ふ「
夜
(
よ
)
」なり。
失楽
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
(著)
陰森
(
いんしん
)
として物の
隈
(
くま
)
ひろごるにほひ。
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
たえず、
冷々
(
ひえびえ
)
と
面
(
おもて
)
をかすめてくる
陰森
(
いんしん
)
たる風、ものいえば、ガアンと
間道中
(
かんどうじゅう
)
の悪魔がこぞって答えるようにひびく。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかし向かい合って立っている浪人にとって苦痛なのは、その武士全体から
逼
(
せま
)
って来る、
陰森
(
いんしん
)
とした圧力で、それが浪人の心持ちを、理由なしに圧迫するのであった。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
陰森
(
いんしん
)
とした静かさが
罩
(
こ
)
もっているように思われました。
妖婆
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
ハッと思って、妙な疑惑につつまれていると、その矢先に、
陰森
(
いんしん
)
とした空気を破って、後ろで不意な人声がする。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
家鳴
(
やな
)
りのあとは一そう
陰森
(
いんしん
)
として、宏大な殿中は、それっきりミシリともしなかったが——やがて何事だろう?
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「道理で、この柵の中から上は
陰森
(
いんしん
)
としているな」
鳴門秘帖:03 木曾の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“陰森”の意味
《名詞》
樹木が茂り暗いさま。
薄暗く寂しいさま。
(出典:Wiktionary)
陰
常用漢字
中学
部首:⾩
11画
森
常用漢字
小1
部首:⽊
12画
“陰森”で始まる語句
陰森凄幽
陰森幽邃