阿呆あはう)” の例文
これは阿呆あはうな子で、学校へ行くのが厭だと云つて居るのですと老婢らうひはよく私に教へました。さう云はれます度に私は身慄みぶるひがしました。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
しも貴下こなたが、世間せけんふやうに、阿呆あはう極樂ごくらくひいさまをれてかっしゃるやうならば、ほんに/\、世間せけんとほり、不埓ふらちことぢゃ。
私は、あの夜、阿呆あはうであつた。完全に、無意志であつた。あの夜のことを、いま思ひ出しても、へんに、だるい。
富嶽百景 (新字旧仮名) / 太宰治(著)
しかるににすねたる阿呆あはういた文学者ぶんがくしや斥罵せきばすれども是れ中々なか/\識見しきけん狭陋けふろう現示げんじせし世迷言よまいごとたるにぎず。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
下心したごころ。——天下てんか諸人しよにん阿呆あはうばかりぢや。さえ不才ふさえもわかることではござらぬ。」
孔雀 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「何んぢや、この鳩が俺のもんなら、この柿は貴さまのもんぢや? 阿呆あはうかせ。」と、獵師は呆れ返つた顏をした。さうして餘りな圖々しさを憎むのあまり、文吾の襟元をつかんで突き轉ばした。
石川五右衛門の生立 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
かの慧敏けいびんなる商人の、称して阿呆あはうといふでもあらう底のものとすれば
山羊の歌 (新字旧仮名) / 中原中也(著)
カピ妻 はい、まうしましたなれど、有難ありがたうはござりますが、のぞまぬとうてゐます。阿呆あはうめははか嫁入よめいりしたがようござります!
文学者ぶんがくしやを以てだいのンきなりだい気楽きらくなりだい阿呆あはうなりといふ事の当否たうひかくばかりパチクリさしてこゝろ藻脱もぬけからとなれる木乃伊ミイラ文学者ぶんがくしやに是れ人間にんげん精粋きつすゐにあらずや。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
阿呆あはう。」
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
カピ長 だまれ、むが/\むが/\と、阿呆あはうめ! 其許おぬし御託宣ごたくせんは、冗口仲間むだぐちなかまさけでも飮合のみあとき被言おしゃれ、こゝにはよういわ。