醜態しゅうたい)” の例文
彼は、掘りだされた醜態しゅうたいの地下戦車の中から瓦斯ガスにふかれたまっくろな顔を外へ出したとき、その両眼は、無念の涙で一ぱいだった。
未来の地下戦車長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「うむ、今度は大いに感じたんだよ。大の男が自分で自分の成績を見に行けないなんて、醜態しゅうたいじゃないか? 豊子さんにもきまりが悪かった」
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
為に——長久手の醜態しゅうたいは、かれとしても、後々まで、身に沁みぬいたこととみえ、ずっと、後年の話にはなるが、こんな挿話そうわまで残っている。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私は、この十年来、東京に於いて実にさまざまの醜態しゅうたいをやって来ているのだ。とても許されるはずは無いのだ。
帰去来 (新字新仮名) / 太宰治(著)
かの女は駒下駄こまげたをひっくり返えした。町会で敷いた道路の敷石しきいしが、一つは角を土からにょっきりと立て、一つは反対にのめり込ませ、でこぼこな醜態しゅうたいかわっているのだ。
かの女の朝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
半ば茶化ちゃかしたような調子で答えたが、それがゆとりのある茶化し方ではなく、むしろきょをつかれて、どぎまぎした醜態しゅうたいをかくすための苦しい方便でしかなかったことは
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
それはドノバンがその才知にまかせて弁舌べんぜつをふるい、他の少年を眼下に見くだすためと、いま一つは富士男のために投げとばされてさんざん説教せっきょうされた醜態しゅうたいを演じたためである。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
一、子供のときに飲んだくれの醜態しゅうたいを見て、おれは酒にふけることは決してしまいという考えを抱いた。して年るごとに、今日おれのなすことがはたしてこの思想にかなっておるか。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
石が大きければ水煙もおびただしいと云った様なもので、傍眼わきめには醜態しゅうたい百出トルストイ家の乱脈らんみゃくと見えても、あなたの卒直そっちょく一剋いっこくな御性質から云っても、令息令嬢達の腹蔵ふくぞうなき性質から云っても
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「何だ、その醜態しゅうたいは? 幕を引け! 幕を!」
将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
南西太平洋軍総司令官「くだらん噂だ。比島を知り、東洋を知る者は、余を置いて外ない。あのスチルウエルの醜態しゅうたいを見なさい」
諜報中継局 (新字新仮名) / 海野十三(著)
加勢して、共にそこへ楯籠たてこもろうとして来たのに、当の桑山隊は、中川隊の全滅もよそに、持場を捨てて、早くも落ちて行ったとある。何たる醜態しゅうたい、何たる心事。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
要するに誰も、醜態しゅうたいを演じなかった。津軽地方で最も上品な家の一つに数えられていたようである。この家系で、人からうしろ指を差されるような愚行を演じたのは私ひとりであった。
苦悩の年鑑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「又見つかりますよ。私、もうあんな醜態しゅうたいを演じたくありませんわ」
嫁取婿取 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
僕は、あやうく身体の平衡へいこうを失ってすってんころりんとするところを、タクマ少年が敏捷びんしょうに腕をつかんで引揚げてくれたので、醜態しゅうたいをさらさないですんだ。
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
秀次の長久手ながくて醜態しゅうたい叱責しっせきしているばかりでなく、日ごろから、秀次が、秀吉の甥だという気もちのもとに、とかく、わがままや慮外な振舞があることを、きつく怒りつけ
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もう、これで自分も、申しぶんの無い醜態しゅうたいの男になった。一点の清潔も無い。どろどろ油ぎって、濁って、ぶざまで、ああ、もう私は、永遠にウェルテルではない! 地団駄じだんだを踏む思いである。
八十八夜 (新字新仮名) / 太宰治(著)
率八が帰りに寄ってみた頃には、先生はもう他愛なく酔って醜態しゅうたいを究めております。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「心臓やその他……機上で人事不省じんじふせいになるなんて、醜態しゅうたいですからねえ」
三重宙返りの記 (新字新仮名) / 海野十三(著)
でも、こんなおろかないんを作ったのは誰でもないこの宋江自身です。たれがあなたを不義としましょうか。たとえ偽狂人などよそおってみても、しょせん、宋江にはよく出来る芸ではなし、醜態しゅうたい
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大抵たいていツルリと滑べることになっているが、この紳士もその例にれずツルリと滑ったのであるが、尻餅しりもちをつく醜態しゅうたいも演ぜずに、まるでスケートをするかのように、あざやかに太った身体を前方にすべらせて
国際殺人団の崩壊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
なんという醜態しゅうたいだろう
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)