となり)” の例文
であるが、しかしこの語はすぐ前にある孔子の語、「徳孤ならず、必ずとなりあり」を反駁はんばくした形になっている。何かよしありげである。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
つい、となり十四五人じふしごにんの、ほとん十二三人じふにさんにん婦人ふじん一家いつかは、淺草あさくさからはれ、はれて、こゝにいきいたさうである。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
すると菊池は苦笑くせうしながら、となりにゐた奥さんにパラソルを返した。僕は早速さつそく文芸論の代りに菊池きくちの放心を攻撃した。菊池の降参したのはこの時だけである。
続澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
涼しさや庭のあかりはとなりから
自選 荷風百句 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
となりとなりうへしたならんで、かさなつて、あるひあをく、あるひあかく、あるひくろく、おようすほどの、へんな、可厭いやけものいくつともなくならんだ。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
僕は曹達ソオダ水の中にウイスキイを入れ、黙って一口ずつ飲みはじめた。僕のとなりには新聞記者らしい三十前後の男が二人何か小声に話していた。のみならず仏蘭西語を使っていた。
歯車 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
行年ゆくとしとなりうらやむ人の声
自選 荷風百句 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
あはせ、ござ、むしろとなりして、外濠そとぼりへだてたそらすさまじいほのほかげに、およぶあたりの人々ひと/″\は、おいわかきも、さんみだして、ころ/\とつて、そしてなえたやうにみなたふれてた。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それから警察署のとなりにある蝙蝠傘屋かうもりがさやも——傘屋の木島きじまさんは今日こんにちでも僕のことを覚えてゐてくれるであらうか? いや、木島さん一人ひとりではない。僕はこの界隈かいわいに住んでゐた大勢おほぜいの友だちを覚えてゐる。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)