那辺なへん)” の例文
こいねがわくは筆者の窮極の主張の那辺なへんにあるかを誤解せられざらんがため、これを最後まで読み続けられんことを切望する。
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
愛に対する道徳の罪人は那辺なへんにか出来いできたらむ、女子はじやうのために其夫を毒殺するの要なきなり。男子は愛のために密通することを要せざるなり。
愛と婚姻 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
しかして兵器の進歩は今日にあっても駸々しんしんとして底止するところを知らず、今後果して那辺なへんにまで及ぶべきや、ほとんど予想すべからざるものがある。
世界平和の趨勢 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
この価値的判断の標準は那辺なへんにあるか、如何なる行為が善であって、如何なる行為が悪であるか、これらの倫理学的問題を論じようと思うのである。
善の研究 (新字新仮名) / 西田幾多郎(著)
その原因は果して那辺なへんに存するか? 一つこいつを見きわめないでは! と言うんで、僕はすこし意地にかかって毎夜根気よく出かけてったものだが
その主旨が那辺なへんに存するかほとんどとらえ難いからである。急に海鼠なまこが出て来たり、せつなぐそが出てくるからである。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
然らば、今の文壇に国民性を描くの要を唱ふるものの真意義は果して那辺なへんにか之れを求むべき。もし之れに是認せらるべき点ありとせば果して何の点ぞ。
国民性と文学 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)
この心霊研究という現象は一般にはまだ承認されておらないが、とにかくその盛んとなった事実は民心の傾向が那辺なへんに向っているかを示すものであります。
ユタの歴史的研究 (新字新仮名) / 伊波普猷(著)
当世の学問なるものが畢竟ひっきょう何に役立つかを考えてみないのは名誉なことじゃない。現代の社会生活の中心問題が那辺なへんにあるかを知らないのは名誉なことじゃない。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
過去の体験と半生の作家生活に於いて、那辺なへんに多少の天分の存するかを知った私は、更生の喜びと勇気の中に、今後童話作家として邁進をつづけようと思っている。
今後を童話作家に (新字新仮名) / 小川未明(著)
しかし結局それは、くだったときのおのれの志が那辺なへんにあったかということ。その志を行なう前に故国の一族がりくせられて、もはや帰るに由なくなった事情とに尽きる。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
然し彼は彼の生前に於て宇宙の那辺なへんにか落したものがある。彼は彼の生涯をささげて、天の上、地の下、火の中、水の中、糞土の中までもぐっても探し出ださねばならぬ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
これからのことは——老公の意中は——那辺なへんにあるものやら、介三郎にもとんとわかっていなかった。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それを気に留めないで引き払おうという課長の意が、那辺なへんにあるかを計りかねた一同だった。
省線電車の射撃手 (新字新仮名) / 海野十三(著)
自分は貴下がかの盲目物語の資料と着想とを那辺なへんより得られたかを知らないけれども、偶〻たま/\自分の手元にも、あれと時代を同じゅうするのみか略〻ほゞ背景をも同じゅうしながら
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
彼はどこへ自分を釣り出そうとしているのか、相手の真意は那辺なへんにあるのか、立ちどころに見抜いてしまった。彼は自分の論文を思い出し、いよいよ挑戦に応じようと決心した。
それを出来るだけ綺麗にブラッシュをかけて、その彫刻のいろいろの部分について製作者の意図が那辺なへんにあったかを見いだすために、精密な研究を始めたが、それは不成功に終わった。
そもそもわたくしは索居独棲さくきょどくせいの言いがたき詩味を那辺なへんより学びきたったのであろう。
西瓜 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
偉人と共に家庭居まとゐするものは、その那辺なへんが大なるかを解するあたはざるが如し。
霧の不二、月の不二 (新字旧仮名) / 小島烏水(著)
博文館以外にも、その当時に古書を翻刻してくれた人々は、その目的が那辺なへんにあろうとも、われわれに取ってはみな忘れ難い恩人であった。その人々も今は大かた此の世にいないであろう。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
那辺なへんより出で来し我ぞ行く我ぞ頭かすかにかがやき光り
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
中編の目的はこの大病の根本原因の那辺なへんにあるかを明らかにし、やがてこの物語全体の眼目にして下編の主題たるべき貧乏根治策に入るの階段たらしむるにある。
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
かの狗子白毛にて黒斑こくはん惶々乎こうこうことし屋壁に踞跼きょきょくし、四肢を側立て、眼を我に挙げ、耳と尾とを動かして訴えてやまず。その哀々あいあいじょう諦観視するに堪えず。彼はたして那辺なへんより来れる。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
我青春の名残なごりとむらうに今は之を那辺なへんに探るべきか。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
今日の経済組織の欠陥の那辺なへんにあるかはよくわかる。
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)