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踏鳴
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ふみな
身體を
搖り、
下駄にて
板敷を
踏鳴らす
音おどろ/\し。
其まゝ
渡場を
志す、
石段の
中途にて
行逢ひしは、
日傘さしたる、十二ばかりの
友禪縮緬、
踊子か。
と
思はず
笑つたが、これは
分らなかつた。
奴はけろりとして、
冷いか、
日和下駄をかた/\と
高足に
踏鳴らす。
とゞろ/\と
踏鳴らしもしない、
輕い
靴の
音も、
其の
筈で、ぽかりと
帽子を
脱ぐやうに
角の
生えた
面を
取つて、
一寸壁の
釘へ
掛けた、
顏を
見ると、
何と!
色白な
細面で
「
媼さん、
又豆府か。そいつを
食はせると
斬つ
了ふぞ。」で、
豫てこのみの
長船の
鞘を
拂つて、
階子段の
上を
踏鳴らしたと……
御自分ではなさらなかつたが、
當時のお
友だちもよく
話すし
四、五名の足のばたばたばたと
床板を
踏鳴らす音ぞ聞こえたる。