赤子せきし)” の例文
敏子という名で、戦争反対をハッキリのべている文章なのだが、ここでは〔三字伏字〕は御自分の赤子せきしが殺されるのを云々という文句がある。
刻々 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
国民の真の味方は国民を以て赤子せきしとし、国民の休戚を以て大御心とせられる歴代の天皇があらせられるばかりです。
選挙に対する婦人の希望 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
あげた土ですよ。咲いた花が悪かったら、わたしという土が悪かったことになる。だのに、そなたは、天子様の赤子せきしとして、はじないはなを持ったじゃないか
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「人間一人救ふた心持は何ともいはれまへんな。これも天子樣の赤子せきしの一人やさかい、おかみから御ほうびがさがつてもよからうと思ふけれど、まだ下らん。」
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
其処そこに肥大な体の、髪もひげも銀を染めたロダン翁がたち迎へて、鼻眼鏡を掛けた目と色艶いろつやのよい盛高もりだかな二つのとに物皆を赤子せきしの様に愛する偉人の微笑を湛へなが
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
「兄弟二人を祐る」とは、玄俊は家に女子が無いので、赤子せきしを兄に託して祐けられ、兄瑞仙は男子が無いので、貞之介の祐二を獲てたすけられたと云ふ意であらう。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
「貴様はそれでも、天皇陛下の赤子せきしかッ! 大和民族かッ、五反田防護団員なのかッ! 恥を知れッ」
空襲警報 (新字新仮名) / 海野十三(著)
大人たいじんには赤子せきしの心あり」と唐人も言っておるから、ロシア人は大人または哲人であるに相違ない。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
陛下の赤子せきし、五十万の生霊を救う爆弾漁業の取締りは、誰でも無条件で遣らなければならぬ神聖な事業ですからね。今後、絶対に君等のお世話を受けたくない考えでいるのです。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
もし陛下の御身近く忠義鯁骨こうこつの臣があって、陛下の赤子せきしに差異はない、なにとぞ二十四名の者ども、罪の浅きも深きも一同に御宥し下されて、反省改悟の機会を御与え下されかしと
謀叛論(草稿) (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
アジヤ諸国においては、国君のことを民の父母と言い、人民のことを臣子または赤子せきしと言い、政府の仕事を牧民の職と唱えて、支那には地方官のことを何州の牧と名づけたることあり。
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「南先生は、日本国民はあげて陛下の赤子せきしであるというご意見ですが」
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
じゅうごうを制す、赤子せきしうて賁育ほんいくそのゆううしなう」と。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
仰っしゃいます。それは平常のお気がねです。この鎮台にたてこもって一体となった城中の者には、もう自分一個というものはないはずです。あなたは、陛下へいか赤子せきし
日本名婦伝:谷干城夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
有信は旗本伊沢の家に妾腹の子として生れた。然るに父の正室が妾をにくんで、害を赤子せきしに加へようとした。有信の乳母にゆうぼおそれて、幼い有信を抱いて麻布長谷寺ちやうこくじに逃げかくれた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
我等は陛下の赤子せきし
晶子詩篇全集拾遺 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
人の子と生れ、同じ弓矢を手にしながら、なんで賊軍の汚名の下に可惜あたら血をながしているか。——おまえ方も生れながらの賊ではない、みな天子の赤子せきしであるはずだ。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
北条氏であれ、東国の諸武士であれ、みな一天の君の赤子せきし。諸民の悪行は、君の御不徳に帰しましょう。まして、らんとなれば、塗炭とたんの苦しみは、良民に降りかかります。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たとえば他郷たきょうへ出て功をあげた子が、その都度つど、家郷の親へよろこびを告げにゆくように——彼は京都へ上っては、陛下に伏して身を低うするときの赤子せきしの情を忘れ得なかった。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いくさとは——豆ヲルニ豆ノ豆ガラヲク——ようなもの。また——モトコレ根ハヒトツカラ生ジタモノ——。どんなたたかいにせよ、赤子せきしの殺し合いは、それだけでも最大な御悲嘆でなければならない。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天皇も仏子ぶっしであり、仏祖も天皇の赤子せきしである。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
万民は赤子せきしとか。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)