ちん)” の例文
「つまりわたしが引き受けることにしよう。もちろん買い切るのではない、ただりるのだ。そのちんに年に二十フラン出すことにしよう」
幾度いくたび越前街道ゑちぜんかいだう往來ゆききれて、ちんさへあれば、くるまはひとりで驅出かけだすものと心得こゝろえたからである。しかし、上下じやうげには、また隨分ずゐぶん難儀なんぎもした。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
やすさんがれい發明はつめいや、金儲かねまうけのはなしをするとき、そのちんおごるのかもれない」とつて宗助そうすけわらつてゐた。會話くわいわはそれなりでつい發展はつてんせずに仕舞しまつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「十郎。宿所へおちついたら、ちんには、うんと餅を食わすぞ。そうだ、坊へ剃刀をお返しして来い」
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おれにめんじておまえたちもがまんしてくれ、おれがあやまりちんはだすから、花前も気ちがいながら、牛をだいじにしてからの思いちがいであってみるとかわいそうなところがある
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
「おれんでない、家主やぬしのだよ。ただつのがおもしろいので、べやしないから、みんなとりちんにやってしまうのさ。なんで、あのけちんぼが、ただで、じゅうなんかすもんか。」
春はよみがえる (新字新仮名) / 小川未明(著)
やくざなフォードを選んだのは、費用をはぶく意味もあったが、当時東京市中のちん自動車には、過半フォードが使用されていたので、その中に立混って、目立たぬという点が、主たる理由であった。
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
もみ一升を稲のこきちん はせを
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「そうか。置いたぜ、髪結かみゆちんを」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)