親里おやざと)” の例文
○かくて産後さんご日をてのち、連日れんじつの雪も降止ふりやみ天気おだやかなる日、よめをつとにむかひ、今日けふ親里おやざとゆかんとおもふ、いかにやせんといふ。
竜宮女房の普通の形は、今日の嫁入婚よめいりこんに近く、妻の親里おやざとに行きかようということはないのだが、この花売竜宮入りだけは婿入むこいりに始まっている。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
國「親里おやざとを拵えれば大家おおやでも頼むのでございますが、旦那が親になって上げてはいかゞです」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
柏崎海軍少尉かしはざきかいぐんせうゐ夫人ふじんに、民子たみこといつて、一昨年いつさくねん故郷ふるさとなる、福井ふくゐ結婚けつこんしきをあげて、佐世保させぼ移住うつりすんだのが、今度こんど少尉せうゐ出征しゆつせいき、親里おやざと福井ふくゐかへり、神佛しんぶついのり、影膳かげぜんゑつつにあるごと
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
いろいろ療養りょうようをつくしたが、いかんともしようがなく、いささかの理由りゆうをもって親里おやざとへ帰した。元来がんらいは帰すべきでないものを帰したのであるから、もと悪人あくにんならぬ老人は長く良心りょうしん苦痛くつうにせめられた。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
始め嘉川の家來どもは今度こんどの一件のもつれはお島の手引てびきに相違なしと其後も晝夜ちうやせめさいなみつひに打殺し死骸は何方へか捨置すておきらざるていになし居たるにお島の親里おやざと住吉町吉兵衞方より此儀に付大岡越前守殿奉行所へうつたへ出ければ越前守殿早速さつそく白洲しらす呼出よびいだされ目安訴状を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
二月九日は嫁が親里おやざとへ還って、一日ゆっくりと遊んで来る日で、家ではおまけに御馳走ごちそうをして出してるのだが、土地ではこの日をオカタボンダシと呼んでいる。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)