親指おやゆび)” の例文
あやながら端渓たんけいで、よく洗ってあるのもたしなみですが、墨は親指おやゆびほどではあるが唐墨のかけらに違いなく、筆も一本一本よく洗って拭いてあります。
其時蟻はもう死んでゐた。代助は人指指ひとさしゆびさきいた黒いものを、親指おやゆびつめむかふはぢいた。さうしてがつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
七人の親指おやゆび食指ひとさしゆびとが、皆源右衞門の擧の上に集つたところで、源右衞門は「よしか。」と一聲、パツと指を開くと、七つの手に一本づゝ紙捻こよりがブラ下つた。
石川五右衛門の生立 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
ぢいやがはたけからつて茄子なすは、とうさんにへたれました。その茄子なすへた兩足りやうあし親指おやゆびあひだにはさみまして、爪先つまさきてゝあるきますと、丁度ちやうどちひさなくつをはいたやうで、うれしくおもひました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
そのうちのひとりは、ひらべったい、ひろい足のうらをしていました。もうひとりは、大きな下くちびるがあごまでぶらさがっていました。三人めの女は、はばのひろい親指おやゆびをしていました。
とくちゃんは、なかなかのひょうきんもので、両方りょうほう親指おやゆびくちなかれ、二ほんのくすりゆびで、あかんべいをして、ひょっとこのめんをしたり、はんにゃの似顔にがおをしてせて、よくひとわらわせました。
春の日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
五七 川の岸のすなの上には川童の足跡あしあとというものを見ること決して珍しからず。雨の日の翌日などはことにこの事あり。猿の足と同じく親指おやゆびは離れて人間の手のあとに似たり。長さは三寸に足らず。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「あなたは、どうしてそんなにはばのひろい親指おやゆびをしているのですか?」