見聞けんもん)” の例文
血を恐れるソレでも私共は見ようと思うものは見、聞こうと思う事はきいたが、ついでながらこの見聞けんもんのことについて私の身の恥をわねばならぬ。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
僕等も売文と云ふことさへなければ、何か商売を見つけるかも知れない。僕等の経験や見聞けんもんもその為に或は広まるであらう。
それから、老番頭はまた、自分が知るかぎりの、同苦坊と師鉄眼との、因縁やら、逸事いつじやら、人間愛に富んだいろんな見聞けんもんばなしをして聞かせた。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
無仏性を道破したのは四祖大医であって、やがてこの無仏性の道は「黄梅に見聞けんもんし、趙州に流通るずうし、大潙に挙揚こよう
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
既にしば/\云つた如くに、わたくしは棭斎の詳伝の有無いうむを知らない。しかし見聞けんもんの限を以てすれば、其妻であつた狩谷保古はうこの第三女は生歿の年月が不詳であるらしい。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
付け旅も少しは草臥くたびれて辛い事の有るのが興多しあまり徃來の便を極めぬうち日本中を漫遊し都府を懸隔かけへだちたる地の風俗をぜにならぬうちに見聞けんもん山河やまかはも形を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
実際挙人老爺と趙秀才はもとからあんまり仲のいい方ではないので「しん身の泣き寄り」などするはずがない。まして鄒七嫂は趙家の隣にいるので見聞けんもんが割合に確実だ。
阿Q正伝 (新字新仮名) / 魯迅(著)
馬鹿な事じゃアないか、ことに新役では有るし、度々屋敷を明けては宜しくあるまい、わしなどは役柄で余儀なく招かれたり、あるい見聞けんもんかた/″\毎度足を運ぶことも有るが
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
足跡そくせき常陸ひたち磐城いわき上野こうずけ下野しもつけ信濃しなの、越後の六ヶ国にわたり、行程約百五十里、旅行日数二週間内外、なるべく人跡絶えたる深山を踏破して、地理歴史以外に、変った事を見聞けんもん
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
人間の同情に乏しい実行も大分だいぶ見聞けんもんしたが、この時ほどうらめしく感じた事はなかった。ついに天祐もどっかへ消えせて、在来の通りばいになって、眼を白黒するの醜態を演ずるまでに閉口した。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
戸外そとで問答をやって居る時は、一つの級に五十人あろうが百人あろうが、まず問者といて一人に答者こたえて一人でほかの者はそれを見聞けんもんして居るというだけ、もちろん折には問者といても変りまた答者こたえても変るですが
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
石器時代竪穴現存の例、北海道のみに多くして、他地方に於ては更に見聞けんもんきも、必竟ひつけう、北海道の地は比較的近き頃迄石器時代人民の棲息地せいそくちなりしと、開拓かいたく未だ行き渡り居らさるとに由る事大ならん。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
とかく、故なき上洛は、鎌倉の幕府のむところでございまする。が、父貞氏の健やかなうち、少しなと世上の見聞けんもん
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いずれにてもみな知識見聞けんもんの領分を広くして、物事の道理をわきまえ、人たる者の職分を知ることなり。
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
あの芝口のぜんという袋物屋へあつらえておこしらえに成った頭巾でございます、御覧なさい、此処にいんが押して有るのは見聞けんもんの時に大勢が同じような頭巾だから解らなくなるといけないと云うので
れから亜米利加アメリカに行き、その次には欧羅巴ヨーロッパに行き、又亜米利加に行て、ただ学問ばかりでなく実地を見聞けんもんして見れば、如何どうしても対外国是こくぜうように仕向しむけなければならぬと
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
呉夫人は、まだ信じない顔で、家士の一名に、城下の見聞けんもんをいいつけた。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)