被仰おっしゃ)” の例文
「ええ。風変りでいらっしゃいました。……そして、なんでも『これはわしの趣味じゃ』と被仰おっしゃるのが口癖でございました」
死の快走船 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
朝から飲んでるからもう酔いざめのする時分だからさ、町代まちだい總助そうすけさんが来て余り酒を飲ましちゃアいけない、あれでは身体がたまるまいと被仰おっしゃって案じておいでだよ
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
わたしは十二の歳から村の入口の咸享酒店かんこうしゅてんの小僧になった。番頭さんの被仰おっしゃるには、こいつは、見掛けが野呂間のろまだから上客のそばへは出せない。店先の仕事をさせよう。
孔乙己 (新字新仮名) / 魯迅(著)
「と被仰おっしゃるのはあなたが江戸っ子でおいでだから。——いまの吉原はそんな国じゃァござんせん。」
春泥 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
「それなら初めからそう被仰おっしゃればいいのに。瀬川さんに遠慮なんかいらないじゃありませんか。」
愚かな一日 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
だってね母上おっかさんのことだから又大きな声をして必定きっと怒鳴どなりになるから、近処きんじょへ聞えても外聞が悪いし、それにね、貴所あなたが思い切たことを被仰おっしゃると直ぐ私が恨まれますから。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
もうびんに大分白髪しらがも見える、汚ない髭の親仁おやじの私が、親に継いでは犬の事を憶い出すなんぞと、あんまり馬鹿気ていてお話にならぬ——と、被仰おっしゃるお方が有るかも知れんが、私に取っては
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「じゃア、おばさん、私が何か不都合な事でもていると被仰おっしゃるんですか。」
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
諏訪 じゃ、どうすればいいと被仰おっしゃるの、そんなこと言って。
華々しき一族 (新字新仮名) / 森本薫(著)
「致しましたが、夫れがどうだと被仰おっしゃるんです」
偽刑事 (新字新仮名) / 川田功(著)
「こちらが、主人の友人で黒塚くろづか様と被仰おっしゃいます。こちらが、私の実弟で洋吉ようきちと申します。どうぞよろしく」
死の快走船 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
「質屋から持って来たお金なんかいやだと被仰おっしゃったのだから持て行かなくったって可う御座いますよ」と言い放って口惜くやし涙を流すところだが、お政にはそれが出来ない。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
それァそうです。——遠州屋さんのそう被仰おっしゃるのは当りまえです。……いかに昨今の、ものを知らない相手だって、仮りにも二長町でつかわれている人間が遠州屋さんを
春泥 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
蘭「貴方が来いとも被仰おっしゃらないに参ってはお叱りを受けようかと思いまして参りかねて居りましたが、兼が何んでもけと勧めますから参りまして、く遅くもお帰りで」
それでもお金持じゃないの? お前は今三人のおめかけさんがあって、外に出る時には八人かつきの大轎おおかごに乗って、それでもお金持じゃないの? ホホ何と被仰おっしゃろうが、私をだますことは出来ないよ
故郷 (新字新仮名) / 魯迅(著)
そう被仰おっしゃるんでしょう。怪しいですね、そりゃ。
華々しき一族 (新字新仮名) / 森本薫(著)
母上おっかさん。貴女あなた何故なぜそんなことを急に被仰おっしゃるのです」と自分は思わず涙をんだ。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
何ういう間違か貴方の床の間に有ります其のお荷物がわしのだと仰しゃるので、判然はっきりとは分りませんが念の為に改めて見たいとこう被仰おっしゃるので、誠に失礼ではございますがお荷物の処を
「と被仰おっしゃると……いったい又なんのためにそんな事をなさるんですか?」
死の快走船 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
孔子様の被仰おっしゃるには「名前が正しくないと話が脱線する」と。
阿Q正伝 (新字新仮名) / 魯迅(著)
何んだ、まだそんなものかと被仰おっしゃったほうがいゝわ。
三の酉 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
「私はね、何もかも全然すっかり憶えていて、貴下の被仰おっしゃった事も皆な覚えていますの。」
恋を恋する人 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
あのんで、なんとか申した変な名でございました其所そこへ材木を買出しながら行くって、帰りに何で周玄さんというお医者が御一緒で、事に依ると金沢へ廻るかも知れんと被仰おっしゃいました
今あなたの被仰おっしゃったように、金剛氏と不義関係にあった被害者の妻が、南室で荷物の整理をしながら、一寸の隙を見て東室へ忍び入り、これから写生をしようとしていた被害者を、後から殴り殺して
闖入者 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
「先生がころがり出ろと被仰おっしゃるのに、てめえはかねえのか」
阿Q正伝 (新字新仮名) / 魯迅(著)
イヤ先生御立腹御尤もだ是は幾ら被仰おっしゃっても宜しい、お腹立御尤もの次第で
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
けれども理由わけ被仰おっしゃい、是非の理由を聞きましょう。
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「と被仰おっしゃると?」
闖入者 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
色々と御親切に仰しゃって衣類まで貸して下さり、此の通りわしに綿入羽織にしろと被仰おっしゃってこれを貸して下すった実に御親切な事で恐入った訳で、あだに思っては成りませんぞ、実に仕合せな事で
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
此の笛を所持したものゝ命日と被仰おっしゃって見ると、誠に思いがけないことでございまする、これはに少ない品でござるが、何う云うわけで此方こなたさまに有りまするか、とんと手前には分りませんが
喜「へえ、なんだか博奕ばくちに勝ったと被仰おっしゃいます」
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)