袈裟げさ)” の例文
振り返つてクワツと眼を剥いたのは、五十近い修驗者しゆげんじや、總髮に兜巾ときんを頂き、輪袈裟げさをかけて數珠じゆずを押し揉む、凄まじい髯男です。
目の前に見えた黒袴の足許を抜き討ちにさっと払いながら立ち上がって、更にまた一人をうし袈裟げさにズーンと斬って下げた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
疵は、逃げようとしたところをでも追い斬りに斬り下げられたらしく、右肩から左へはすにうしろ袈裟げさが一太刀です。
三人が眼をあげると、お菊は右の肩先からうしろ袈裟げさに切下げられて、冷たい土の上に横たわっていた。播磨は彼女の死骸を井筒の底へ沈めろといい付けた。
番町皿屋敷 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
彼らは大袈裟げさにオックスの作を喝采し、二、三度作者を呼び出した。オックスはそのたびにかならず姿を現わした。そして、それがこの音楽会の終わりだった。
うし袈裟げさに、ザックリと思う壺に浴びせられて、二言にごんともなく息が絶えている形であります。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
食事中に俊亮は、今日の次郎の水泳ぶりを大袈裟げさ吹聴ふいちょうした。そして最後に
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
甚だ大袈裟げさで雲つくばかりの大入道となり、人間の胆を潰すのを見て喜ぶ。
老狸伝 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
目掛けて追來おひきたうしろより大袈裟げさに切り付申候是によりて嘉川家の者ども散々さん/″\に逃退きやうやく喧嘩も鎭り屋敷へ歸りし後此事内濟ないさいにて相濟あひすみたり然れ共私し儀首筋よりけて大疵おほきずあるに付其時より異名を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ニューラの大袈裟げさな様子をいやがるように素子がきいた。
道標 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
うしろ袈裟げさに。
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
傷は一刀の下に斬下げた、見事な後ろ袈裟げさ虚空こくうを掴んでった太吉の顔は、おびただしい出血に、紙よりも白くなっております。
重荷の下に前かがみになってるゴットフリートは、ふり返った。そして大袈裟げさな身振りをやってるクリストフの姿を見、ある標石の上にすわって、待ち受けた。
後ろ袈裟げさを狙った、女衒ぜげんの久六の道中差。かわして、のめり流れた背中へ、ピュッと一太刀浴びせつけた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
右の肩先からうしろ袈裟げさに斬られているのを見ると、その相手は恐らく武士さむらいで、うしろから一刀に斬り倒して、死骸を河へ投げ落としたのであろうと察せられた。
傷は一刀の下に斬下げた、見事な後ろ袈裟げさ虚空こくうを掴んで仰反のけぞつた太吉の顏は、おびたゞしい出血に、紙よりも白くなつて居ります。
孟達は、きたなくもまた、逃げ奔ったが、申耽に追いつかれて、武将のもっとも恥とする後ろ袈裟げさの一刀を浴びて叫絶一声、ついに馬蹄の下の鬼と化してしまった。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「善吉は下谷金杉に小さい店を持っているんですが、それが坂本二丁目の往来で斬られたんです。こいつはわたくしと違って、うしろ袈裟げさにばっさりやられてしまいました。」
(新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そういう不機嫌ふきげんな愚痴の最中に、突然、また快活な様子が騒々しく大袈裟げさに現われてくるのであった。するともう、先刻の苦情と同じく、その快活さにも手のつけようがなかった。
佐渡屋は兩替淺草組世話役で、身上しんしやうはざつと五萬兩。地所や家作も相當で、それに眼をつける惡者があれば隨分大袈裟げさなこともたくまないとは限りません。
追い袈裟げさり上げ腰車、右へ小手斬り左へ捨て打ち、身をひるがえせば梢斬り! 見る間に血は河となり修羅にのた打つ手負いの数、小気味はよいが目も当てられない。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そしてついには、わずかな愚痴にもそういう大袈裟げさな反響を返されるのにおびえきってる不幸なフォーゲルを、すっかり圧倒してしまったばかりでなく、また自分自身をも圧倒してしまった。
と、不平をいいながら、長刀ながもので、後ろ袈裟げさにあびせた。後詰の三名もたまらなくなって
田崎草雲とその子 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
平常ふだんから物言いや表情の大袈裟げさな女ですが、それにしても、今日は少し様子が変です。
呪の金剛石 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
と、家の中も、表も裏も、皆開け放して、二、三ヵ所に、大袈裟げさな焚火をしておいた。
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
八五郎は白痴こけが大きななまずでも釣つたやうな大袈裟げさな顏をするのです。
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
気の毒だが生命いのちはもらうぞ——だめだだめだ! 鞍馬くらまの竹童ジリジリ二すんや三寸ずつ後退あとずさりしても、八風斎の殺剣さつけんがのがすものか、立って逃げればうしろ袈裟げさへひとびせまいるぞ
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「江戸開府以來の殺しは大袈裟げさだが——兎も角、行つて見ようか」
八五郎は大袈裟げさに、自分の耳などをほじつて見せるのです。
八五郎は大袈裟げさに身ぶるひなどして見せるのでした。