衛士えじ)” の例文
で、手にあました浜松城はままつじょう武士ぶしや、石見守いわみのかみからうったえたものであろう、御岳神社みたけじんじゃ衛士えじたちが数十人、ご神縄しんじょうしょうする注連縄しめなわを手にもって
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
平安朝になりましては、もはや山人やまびとをわざわざ京都まで呼ぶの手数を省いて、左右の衛士えじが山人の代になって、この儀式をやっております。
かつて西鶴輪講の時、『一代男』の「衛士えじ焼火たくひは薄鍋にもえて、ざつと水雑水みずぞうすいをとこのみしは、下戸げこのしらぬ事成べし」
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
これは後代の神楽歌かぐらうたで、衛士えじが昔の山人の役を勤めるようになってから、用いられたものと思います。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
更に眼を定めてよく見ると内裏様だいりさまもあれば、官女かんじょもあり、五人囃子ばやしもあり、衛士えじもあり、小町姫もあり、また雛道具としては箪笥たんす、両替、膳、鏡台、ボンボリ、屏風びょうぶ
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
(帝の忠誠の臣として、帝の一個の衛士えじとして、尽くすべきことを尽くせばよい。ましてや太子のその後の予言に、大兇変ジテ一元ニ帰スと、こう記してあるではないか)
赤坂城の謀略 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
美々しい回しをつけた力士が堂々としてにらみ合っていざ組もうとすると、衛士えじだか行司だかが飛び出して来て引き分け引き止める。そういう事がなんべんとなく繰り返される。
田園雑感 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
三十人組というのは藩主側近の衛士えじで、江戸と国許くにもとに六十六人ずつ二組になっており、水練、木登り、早道などという特殊の技能者が集めてある、本来が戦場非常のばあいに備えた部署で
評釈勘忍記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
御神楽おかぐらや火を衛士えじにあやからん 去来
俳句上の京と江戸 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
キキキ、キキ……と奥の木立からきしみめぐッてくる牛車の輪音わおとに気づくと、門の衛士えじ滝口たきぐち義数よしかずはすぐ衛士小屋の部下を呼ばわって、待ちかまえ
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それは困った」介は、院の御所へ行って、衛士えじに取次ぎを頼んでみようと思った。で、そこを辞して、また駈けだして行くと、途中で、範綱に会った。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さけんで、ひとりの衛士えじなわをかりて修羅王しゅらおうのようにあばれている加賀見忍剣かがみにんけんの前へつかつかとっていった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
滝口にも、古くから、防人さきもりとか、健児こんでいなどの、諸国の壮丁が詰めていた。御所内の滝口に兵舎があるので、滝口の衛士えじとか、滝口の武者などという称呼が生れた。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは、左兵衛さひょうえノ府の衛士えじたちの声々だった。一せいに、ながえとらえて、下乗を命じる。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
神子上みこがみ家は、世々、神宮のおまもりをしている伊勢の神職荒木田家に属す神苑衛士えじの家だったが、典膳がもの心づいた頃は、松坂ざいにひきこもって、母ひとり子ひとりの暮しであった。
剣の四君子:05 小野忠明 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
漆掻うるしかきに身をやつした森掃部が、門の衛士えじ誰何すいかされつつ、しいて中門まで駈けこんだので、蔵人くろうどたちとの間に、烈しい言いもつれを起していた。掃部はすべての咎めに耳もかけず
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けんは、武士のたましいだ。武士は国体の衛士えじだ。この国土のある限り武士道はある。武士のある限り、武士のたましいたる剣もなくてはならぬ。——わけても日本刀は、洋刀とは違う。
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
衛士えじの役はすべて、信濃坊源盛の手であつめられた大山だいせんの僧兵があたっていた。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いや、衛士えじと争うているすきに、つい菊王めを、捕り逃がしまいたので」
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
殺到さっとうした、御岳みたけ衛士えじ数十人が、手に手に、ご神縄しんじょう松明たいまつをもち
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
衛士えじすべて甲冑かっちゅうを帯し、怪しと見ればすぐ大喝だいかつしてただす。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)