蟒蛇うわばみ)” の例文
さては妖邪の気が吸うのだと感付き、若少者わかもの数百人を募り捜索して、長数十丈なる一大蟒蛇うわばみを見出し殺した(『淵鑑類函』四三九)。
三十何呎なんフィイト蟒蛇うわばみを退治した話や、広東カントン盗侠とうきょうランクワイセン(漢字ではどんな字に当るのだか、ルウズ氏自身も知らなかった。)
長江游記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
狼の頭、豹の頭、さめの頭、蟒蛇うわばみの頭、蜥蜴とかげの頭、鷲の頭、ふくろの頭、わにの頭、——恐ろしい物の集会である。彼は上座の方を見た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ある大きい蟒蛇うわばみが人間に化けた時、すなわちその外形は人間にして蟒蛇のタイプであるといったらば、諸君にも大かた想像がつくであろう。
○「小声でやってくだせえ、みんなそらっぺえばなしで面白くねえ、旦那が武者修行をした時の、蟒蛇うわばみ退治たいじたとか何とかいうきついのを聞きたいね」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ちょうど蟒蛇うわばみの昔語りがあるばかりに、きれいな小蛇が殺されるのとよく似ていて、こちらはさらに記憶が生々しいのである。
その眼のひかりは松明たいまつのようで、あたりも輝くばかりに見えるので、汪は恐るおそる窺うと、それは大きい蟒蛇うわばみであった。
と見て取った一瞬間、水中の丘から十間も離れた水藻の浮いている水面から水沫しぶきさっと上げながら空中にヒラヒラと閃めいたのは、蟒蛇うわばみに似た顔である。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
前夜暗闇くらやみの中では、兵士らは蟒蛇うわばみのごとくひそかに防寨に押し寄せた。しかし今は、白日のうちで、そのうち開けた街路の中で、奇襲はまったく不可能だった。
……サアめたぞ。モウ大丈夫だぞ。俺ぐらい自由自在な、進歩した姿の生物はいまいと、木の空から小手をかざしていると、思いもかけぬ背後うしろから蟒蛇うわばみが呑みに来ている。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
たとえば、蟒蛇うわばみの味噌漬なんかをひどく食べすぎた時、熱い湯に入って、ウンとこらえておりますと、全身の毛穴から強い精分や塩分はみんな絞り出されてしまうのです。そのでさ。
醤油仏 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三四郎はこの缶の横っ腹にあいている二つの穴に目をつけた。穴が蟒蛇うわばみの目玉のように光っている。野々宮君は笑いながら光るでしょうと言った。そうして、こういう説明をしてくれた。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
お止し遊ばせば可いのに、お妖怪ばけと云えば先方さきで怖がります、田舎の意気地いくじ無しばかり、おいら蟒蛇うわばみに呑まれて天窓あたまげたから湯治に来たの、狐に蚯蚓みみずを食わされて、それがためおなかを痛めたの
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
大きな熊蜂や蟒蛇うわばみも棲んでいる。さらに怪しいのは、夜も昼も音楽の声、歌う声、く声などの絶えないことである。
「話と申しますのは、実は旦那様だんなさま。」とジョンドレットは言いながら、テーブルの上にひじをつき蟒蛇うわばみのようなじっとすわったやさしい目でルブラン氏をながめた。
かの蟒蛇うわばみのような眼——それはだんだんにはっきりと見えて来た——から私の眼をそむけた。
『郷土研究』一巻三九六頁に見た中国の蛇神トウビョウも蛇に似て短いとは、かかる畸形の一層烈しいのでなかろうか。インドのカーシャヒルス地方の迷信に、蟒蛇うわばみが人家にやどれば大富を致す。
一頭の大鹿を横に喰わえた一匹の蟒蛇うわばみが蜿蜒と目の前の雑草を二つに分けて沼の方へはしっているではないか! 私の友達の山羊や小猿がお喋舌りを止めた筈である。私さえ一声も出せなかった。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
しかしゆうべの出来事から、私はこういうことを初めて発見しました。怪物は猿でもない、蟒蛇うわばみでもない、野蛮人でもない。たしかに人間の眼には見えないものです。
麻畑の一夜 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
毒どくしい蟒蛇うわばみの眼のように大きく飛び出して来た。
狸の皮の膝掛けをかかえていた婦人は、まむしとか蟒蛇うわばみとかいう渾名あだなのある女で、いつでも汽車のなかを自分のかせぎ場にして、掏摸を働いたり、男を欺したりしていたのだ。
探偵夜話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
まず媒妁人なこうどの七蔵をよび起して、今夜の首尾を確かめようと、彼女は更に次の間の障子をあけると、酔い潰れた七蔵は蚊帳から片足を出して蟒蛇うわばみのような大鼾おおいびきをかいていた。
半七捕物帳:14 山祝いの夜 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
その次の問題は蟒蛇うわばみである。うわばみがい込んで来て、ひと息に呑んでしまうのではないかとも考えたが、蛇も火を恐れる筈である。殊に夜なかに這い出して来るかどうかも疑問であった。
麻畑の一夜 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
穴は深く暗く、その奥にみずち蟒蛇うわばみのようなものがわだかまっていて、寄り付かれないほどになまぐさかった。やがて蟒蛇はかねのような両眼をひらくと、その光りはさながら人をとろかすように輝いた。