茄子畑なすばたけ)” の例文
娘の帯の、銀の露の秋草に、円髷の帯の、浅葱あさぎに染めた色絵の蛍が、飛交とびかって、茄子畑なすばたけへ綺麗にうつり、すいと消え、ぱっと咲いた。
貝の穴に河童の居る事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
はたけ作主さくぬしその損失そんしつ以外いぐわいにそれををしこゝろからかげいきほはげしくおこらうともそれはかへりみるいとまたない。勘次かんじせた茄子畑なすばたけもさうしておそはれた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
それでも或日の四時過ぎに、母の云いつけで僕が背戸の茄子畑なすばたけに茄子をもいで居ると、いつのまにか民子がざるを手に持って、僕の後にきていた。
野菊の墓 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
茄子畑なすばたけがあると思えば、すぐ隣に豌豆えんどうの畑があった。西洋種のうりの膚が緑葉のうろこの間から赤剥あかむけになってのぞいていた。
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
と、遠くに、ひざまずいて、茄子畑なすばたけの主君に告げた。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その声が、耳近みみぢかに聞こえたが、つい目前めさきの枝や、茄子畑なすばたけの垣根にした藤豆ふじまめ葉蔭はかげではなく、歩行ある足許あしもとの低いところ
海の使者 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あけぼのらず、黄昏たそがれもりなか辿たどることありしが、みきあかねさす夕日ゆふひ三筋みすぢ四筋よすぢこずゑにはうすものもやめて、茄子畑なすばたけくらく、はなちひさきとなりつ。
森の紫陽花 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)