若気わかげ)” の例文
旧字:若氣
その若気わかげを、ひとまずはなだめながら、実は、不抜な意志にかためさせているような言葉が、国香や良兼たちの老巧な態度に見られる。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
皆妙齢だから、所謂いわゆる若気わかげ過失あやまちを起さないように監督するのも僕の役目の一つだ。綺麗な人が多い。これは採用の時、容姿も算当に入れるからだろう。
四十不惑 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
若気わかげあやまちだった、魔がさしたのかも知れない、ふとしたはずみに足を踏み外したのが、取返しのつかぬ事になった」
(新字新仮名) / 山本周五郎(著)
………実を云えば、手前、若気わかげのあやまち、とでも申しましょうか、……今から四十年前の昔でございます。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
若気わかげの至りとは云いながら手にだに受けず、机の上に置去りにし、うちを出た此の短冊が何うしてこゝに有ったかと、余り思い掛ない事だから驚いたが、素知らぬてい
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
たとえ若気わかげの至りとは言いながら、雲水たちの一部に、こんな人間味が行われはじめたということを知った以上は、和尚として儼乎げんこたる処置を取ることでありましょう。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
若気わかげの一端の過失のために終生を埋もらせたくないと訓誡もし、生活の道まで心配して死ぬまで面倒を見てやったというは世間に余り例を聞かない何という美談であろう。
三十年前の島田沼南 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
一時の若気わかげで僧侶の正しい行いをまっとうすることが出来なかったのである。しかし世間一体の風潮もすでにそういう風であるから幾分か世間の風潮に染んだのであろうと思う。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
彼はこの家の次男で、本来ならば相当の土地を分配されて、相当の嫁を貰って、立派に一家の旦那様で世を送られる身の上であるが、若気わかげの誤まり——と、他の雇人は云った。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そしてそれ以前のものは、或ひは素質的には不識裡に、よいものもあつたかも知れぬが、大体、若気わかげ過失あやまちと云ふ気がしてならない、勿論、若気わかげ過失あやまちはよい、が、それに終つてはならない。
「私」小説と「心境」小説 (新字旧仮名) / 久米正雄(著)
……若気わかげの至りとはいいながら、至極あっさりしたかんがえふけったものです。
人工心臓 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
ここにおいてかゲーテの偉大なることを認めてシラーの若気わかげを捨てるにいたると説いてあるが、僕は今日こんにち三十よりむしろ四十に近い年になるが、ゲーテとシラーのいずれを好んで読むかといえば
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「これはいかさまごもっともで、私のいい間違いでございました。実はな今から十年ほど前に、上州方面へ参りましたが、若気わかげの誤りと申すやつで、博徒の仲間へはいりましたところ忽ち起こる喧嘩出入り、その時受けましたのがこの傷で」
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それがまた、若気わかげの兄弟たちを、逆にあおったものとみえ、二男の祝虎が、こんどは李応りおうの手紙を引き裂いて叩き返したものだという。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ばかなやつだ」と去定は立ちあがった、「若気わかげでそんなことを云っているが、いまに後悔するぞ」
是まで勤めむきも堅く、ほんの若気わかげの至りで、女を連れて逐電いたしたのじゃが、いまだお暇の出たわけではなし、只家出をしたかどだから、お詫をして帰参のかなう時節もあろう
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それにもかかわらず、後には若気わかげ過失あやまちで後悔しているといった。自分には文学的天分がないと謙下へりくだりながらもとかくに大天才と自分自身が認める文豪をさえ茶かすような語気があった。
二葉亭追録 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
わけて彦右衛門正勝には、その頃、僧侶としてはまだ多分に若気わかげであった一旅僧の恵瓊の姿が追憶された。そして感無量なおもてでながめ入るのであった。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
此処こゝこして来ましたのはぜん申上げました右京様の御家来藤原喜代之助で、若気わかげの至りに品川のあけびしのおあさと云う女郎にはまり、御主人のお手許金てもときんつかい込み、屋敷を放逐ほうちく致され
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
若気わかげだ! ……。斬った後ですぐそう思ったが、間にあわぬ。性分というものは、抑えていても、無意識に出てしまう。——いや愚痴はよそう。おさらば」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いっそ、物笑いになるだけのことだ。若気わかげだろうが、考え直して、ここから姿をかくしたがいいぜ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
若気わかげとは申しながら、とんだつかいこみをやりまして、あぶなく主人から役所へ突き出されるところを
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)