芽生めばえ)” の例文
折しも秋の末なれば、屋根にひたる芽生めばえかえで、時を得顔えがおに色付きたる、そのひまより、鬼瓦おにがわらの傾きて見ゆるなんぞ、戸隠とがくやま故事ふることも思はれ。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
それは、芽生めばえを摘んだら、親木が余計成長するだろうと思って、芽生を摘み摘みするうちに、親木が枯れて来たという話で、ひどく私は身にツマされた。
芽生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
勿論もちろん、根を抜かれた、肥料こやしになる、青々あおあおこなを吹いたそら豆の芽生めばえまじって、紫雲英れんげそうもちらほら見えたけれども。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そんなですから私も自然見真似みまねをして、小さな鉢に松や南天などの芽生めばえを植え、庭に出る事が多いのでした。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
初めて、お互の思いを打ち明けた後に、恋人同士は、自分達のお互の恋の芽生めばえを話し合うものだが、京子も村川に対する恋心の成長を話そうというのである。
第二の接吻 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
わが最初の記念の一つは既にその芽生めばえを見せたり。おもふにわれは最早六つになりし時の事ならむ。われはおのれより穉き子供二三人と向ひなる尖帽僧カツプチノオの寺の前にて遊びき。
これも実業家の芽生めばえで、鈴木藤十郎君の後進生である。三平君は以前の関係から時々旧先生の草廬そうろを訪問して日曜などには一日遊んで帰るくらい、この家族とは遠慮のない間柄である。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
日本の魔法使も、埃臭ほこりくさ飛田とびたの土の中から、コスモスの芽生めばえには似てもつかない色々いろんな物を見せてくれる。業突張ごうつくばりの予選派のつらくひしん坊の同志会の胃の腑。泥だらけな市長の掌面てのひら……。
まだ芽生めばえのうちに押しつぶされて安土あづちの城が粉のようになって飛ぶ。
島崎君は『芽生めばえ』の中に子供は自分の一部分であると書かれた。
文壇一夕話 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
もさし、ひし芽生めばえ
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
くらおくから、黄金色こがねいろ赤味あかみしたくもが、むく/\と湧出わきだす、太陽たいやう其処そこまでのぼつた——みぎはあしれたにも、さすがにうすひかりがかゝつて、つのぐむ芽生めばえもやゝけぶりかけた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いつかまた芽生めばえして
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
芽生めばえ日日ひびして
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
刈株かりばね芽生めばえして
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)