舌鼓したうち)” の例文
と、地面じべたのたくつた太い木根につまづいて、其機会はずみにまだ新しい下駄の鼻緒が、フツリとれた。チヨツと舌鼓したうちして蹲踞しやがんだが、幻想まぼろしあともなし。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
れったいな。」新吉は優しい舌鼓したうちをして、火箸を引ったくるように取ると、自分でフウフウ言いながら、火を起し始めた。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
老夫らうふむしろはしに坐し酒をゑみをふくみつゞけて三ばいきつ舌鼓したうちして大によろこび、さらば話説はなし申さん、我廿歳はたちのとし二月のはじめたきゞをとらんとて雪車そりひきて山に入りしに
引斷ひきちぎりては舌鼓したうちして咀嚼そしやくし、たゝみともはず、敷居しきゐともいはず、吐出はきいだしてはねぶさまは、ちらとるだに嘔吐おうどもよほし、心弱こゝろよわ婦女子ふぢよし後三日のちみつかしよくはいして、やまひざるはすくなし。
蛇くひ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
舌鼓したうちをして古ぼけた薬鑵やかんに手をさわってみたが湯はめていないので安心して
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
お作から筆の廻らぬ手紙で、東京が恋しいとか、田舎は寂しいとか、体の工合が悪いから来てくれとか言って来るたんびに、舌鼓したうちをして、手紙を丸めて、ほうり出した。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
『チヨッ。』と馬子は舌鼓したうちした。『フム、また狐の眞似てらア!』
赤痢 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
「日の暮れるまで何をしてるだか……。」と、父親は舌鼓したうちをして、煙管きせるを筒から抜いた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
『チヨツ。』と馬子は舌鼓したうちした。『フム、また狐の真似てらア!』
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)